search
とじる
トップ > 社会 > 森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 自民党はなぜあせったのか

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 自民党はなぜあせったのか

 12月6日深夜、参議院本会議で特定秘密保護法案が与党のみの賛成で可決・成立した。国会の周辺は法案に反対する1万人以上のデモ隊が取り巻き、法案を廃案にせよと叫び声を上げた。彼らは特殊な人ではない。普通の市民だ。市民がこれだけ集まったことは、最近ではなかった。
 それだけではない。学者、弁護士、ジャーナリスト、労働組合、消費者団体など、あらゆるジャンルの人々が反対の声を上げた。その中には、自民党の支持者も含まれていた。彼らが反対した理由は、今回の法案が言論の自由や国民の知る権利を侵す可能性が高いのにもかかわらず、その危険性を排除するための仕掛けが、きちんと作られていなかったからだ。法案がずさんな作りであったことは、法案を担当した森まさこ大臣の国会答弁が、二転三転したことからも明らかだろう。生煮えの法案は、国会で十分に中身をもんで、細かい修正を積み重ねていくのが常道だ。ところが、政府・与党は、早期成立にこだわった。丁寧な国会審議をしておけば、日本維新の会やみんなの党も賛成にまわったはずだ。しかし、それを無視して与党単独採決に踏み切ったのだ。

 強行突破の理由について、「国会でのねじれが解消し、次の選挙が3年先だから、無理をしても国民は忘れてしまうだろう」と与党がタカをくくったのだとする意見もある。しかし、私はそうは思わない。安倍内閣は、すでに原発を重要電源として位置づけ、再稼働させる方針を固めている。ところが、強行突破で再稼働という方向には動いていない。やはり、国民の評判は気にかかるのだ。
 政府・与党が焦った理由は、米国からの圧力だと私は考えている。いま、自衛隊は大きな転機を迎えている。それは、これまでの専守防衛のための部隊という位置づけから、米軍と共同行動をする実戦部隊への転換だ。そこに向かう布石は、すでに打たれている。例えば、日米のイージス艦で情報共有を伴う訓練をしたり、'12年3月には航空自衛隊の航空総隊司令部が米軍横田基地内に移転している。日米が共同で軍事行動を取るための環境整備は着々と進んでいるのだ。

 ただ、実際に共同で軍事行動をとるとなると、米軍にとって不都合が生ずる。自衛隊に米軍の機密情報が共有されてしまうのだ。だから米国政府が日本に強く迫っているのが、米軍の機密が漏洩する前に、機密保護の仕組みをしっかり整えよということなのだ。
 政府が、何を特定機密とするのか明らかにできなかった理由もここにある。何を特定機密にするかは、事実上米軍が決める。日本政府に権限がないのだ。もちろん、そんなことは公式には絶対言えない。だから、法案も国会答弁も曖昧なものになってしまうのだ。

 特定秘密保護法案の先には、確実に集団的自衛権の行使容認が待っている。集団的自衛権は、同盟国が攻撃を受けたら、共同して防衛行動をとるということだ。それは事実上、自衛隊が米軍の付属部隊になることを意味している。
 アメリカが戦争をすれば、日本は米軍を守らないといけない。発足以来、日本の自衛隊は一人の人間も殺していない。これからは、自衛隊も殺人に加わる。それが待ちかまえる未来だ。

社会→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

社会→

もっと見る→

注目タグ