横浜の惨状は目を覆うばかりだ。3年連続最下位を独走中。一昨年が48勝94敗2分で勝率3割3分8厘。昨年も51勝93敗で勝率3割5分4厘。今季も勝率3割台の最下位というのだから、あきれるばかりだ。
「アナライジング・ベースボール」を標榜した尾花監督だが、何を分析したのか。そんな悲惨なチーム状況の上に、村田と内川の主砲コンビが揃ってFA移籍という情報がファンの耳に入れば、背を向けられてしまうだろう。
が、球団フロントが危機感を募らせているのは、内川のFA権利行使の可能性だ。「内川はFAに興味を持っている。どうも他球団へ移籍したがっているようだ」と、内川のFA移籍に警戒を強めている。
というのも、「村田、内川の2人とも残留させるのは球団の財政的に難しいだろうが、内川だけはどうしても残留させたい」というのが、球団側の基本方針だからだ。年俸2億6000万円の村田のFA移籍はやむなし、1億7000万円の内川の方は何がなんでも残留させたいというのもわかる。
07年に36本、08年にも46本を打って、2年連続本塁打王に輝いた主砲の村田だが、昨シーズン両太もも肉離れに悩まされ、25本塁打止まり。今季も不振を極めている。性格的にも独りよがりで、チームから浮いた存在になっている。
しかも球団としては、ポスト村田として高校通算69本塁打のルーキー筒香嘉智(横浜高出)を二軍で英才教育しており、現場サイドでは9月の一軍デビュープランを検討しているという。すでに「来季は村田がいなくても、筒香がいるから大丈夫」という新チーム計画を進めているので、村田のFA移籍によるダメージはない。
捕らぬ狸の皮算用ではない。「筒香は、松井秀喜クラスになる本物の逸材だ。巨人の大田とはモノが違う」と、球界大物OBたちがこう口を揃えているからだ。
村田の穴は筒香が埋めても、来季も主砲として期待している、一昨年の首位打者・内川に抜けられたら、チームにとって大打撃になる。それだけに今から戦々恐々としているのだ。
今季は古巣の一塁に戻った内川だが、シーズン途中から外野へ戻っている。打順もクリーンアップから1番バッターに変更されたが、フォア・ザ・チームに徹した選手だから、文句一つ言わない。
昨年春に行われ、連覇したWBC日本代表選手としても、当時、慣れない外野で超ファインプレーをして原監督から絶賛され、シーズンに入ってもそのまま外野を守ったというエピソードもある。
そんなチームプレーに徹した内川にFA移籍されてしまったら、いくら筒香が期待通りに新主砲として働いても、チームの浮上は望めない。筒香を生かすためにも、内川が必要になってくる。内川残留説得に成功するかどうか。来季の横浜の命運がかかっている。