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上場廃止か、果ては身売りか… 泥沼マクドナルドに迫るXデー

 日本マクドナルドHD(ホールディングス)の株主が激怒している。まずは迷走の“A級戦犯”の異名を取る原田泳幸・前会長の退職慰労金と役員報酬が総額3億3900万円に達したことについてだ。
 原田氏は3月25日の株主総会で会長を退いたとはいえ、昨年6月にはベネッセHDの会長兼社長へ転出した身。その御仁に対し、ベラボウな“追い銭”を支払ったのだ。内訳は持ち株会社であるHDの役員報酬が1億6900万円。HDの退職慰労金が8400万円、事業会社であるマクドナルドの退職慰労金が8600万円−−。
 昨年12月決算で上場以来初となる屈辱の営業赤字に塗れ、今や難破船と化している同社のことである。株主総会に出席した株主が「正気の沙汰とは思えない」と怒りをあらわにしたのも無理はない。

 追い打ちを掛けるのが、これまで「未定」としていた今年12月期の業績予想を「4月中旬をメドに公表する」と先延ばしをされたことだ。財政改善策も、そのタイミングに合わせて発表するという。
 「業績見通しといい改善策といい、本来であれば昨年12月決算を発表した今年2月5日の段階で示すべきです。それが最高意思決定機関の株主総会に間に合わないばかりか、よりによって4月中旬まで延ばした。株主の目には『現経営陣は本気で会社を再生する気があるのか』と映る。総会直後には、そんな株主の怒りが溢れていました」(市場関係者)

 再生の処方箋さえ誠意をもって示せない以上、サラ・カサノバ社長率いるマクドナルドが当事者能力を欠いているのは明らかだ。関係者はさらに言い放つ。
 「要は実質的に株式の50%を握る米国本社が日本のマックに対する重大な決断を迫られており、カサノバ社長たちは自らの意思では何も決められないということ。従って米本社の“裁断”が下るまでは、どう陰口を叩かれようが株主が激怒しようが、ここは時間稼ぎするしかない。そんな非常事態に追い込まれているのです」

 いま市場で密かに囁かれているのは、米国本社がTOB(株式公開買い付け)を行って100%子会社化するシナリオだ。非上場会社にした後、株価や株主の顔色をうかがうことなく大胆な改革を断行して経営を立て直し、大きく毀損したブランドイメージを回復する方法である。米投資ファンド、ベインキャピタルの下、MBO(経営陣による買収)を経て昨年10月に8年ぶりで株式再上場にこぎ着いた『すかいらーく』の成功例は有名だ。

 マクドナルドの場合、カサノバ社長など日本側がどこまでTOBに関与するかは定かではない。その意味では経営陣が投資ファンドなどとタッグを組むMBOよりも、米本社主導によるTOBが有力視されるゆえんだが、外資系証券で外食産業を担当するベテランのアナリストは「米本社は既に外堀を埋めている」と明かす。3月の総会を機にマクドナルドが“出戻り幹部”の下平篤雄氏を空席ポストだった副社長に大抜擢したこと、および米マクドナルドに入社して以来、世界各地で店舗運営を指揮してきたこの道42年のベテラン、ロバート・ラーソン氏を日本の会長に送り込んでカサノバ社長、下平副社長の二人三脚をバックアップする体制を敷いたことだ。アナリストが続ける。
 「下平さんは原田さんとソリが合わず、フランチャイズ(FC)店を100以上運営する新潟の会社に出向した後に転籍している。それが今年の1月、急きょ本社に呼び戻されて店舗運営の執行役員に就いた。これだけでも異例なのに、彼は3月総会で副社長になり、日本の内情に疎いカサノバ社長をバックアップする。当然、この人事は米国本社が描いた。上場廃止に踏み切った後、FCに精通した下平さんを社長に抜擢する布石に他なりません」

 しかし、米国本社が描くシナリオにも難点がある。マクドナルドの時価総額は約3500億円。この50%を取得するには最低でも1750億円が要る。TOBを成功させるには、ある程度のプレミアムが欠かせないとすれば、2000億円、あるいはそれ以上の金が必要だ。ところが日本ほどではないにせよ、米国本社も3月にCEOが経営不振で引責辞任に追い込まれたように財政は厳しい。
 「米本社が投資ファンドとタッグを組む可能性がある一方、出戻り副社長のリーダーシップをもってしても再生が厳しいと判断すれば、撤退もしくは身売りカードを切る可能性がある。期限切れ鶏肉問題、異物混入事件と問題続出ですが、本当の修羅場はこれからかもしれません」(マックOB)

 “戦犯”に法外な追い銭を支払って涼しい顔を決め込む甘い体質の改善こそが、当事者能力を回復する早道ではないか。

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