「いろいろと調べたら100万円くらい返還できそうだという話でした。これで多少は事業資金の足しになるかなと楽しみにしていたのですが、その後、数カ月たっても業者からは一向に連絡が来ない。最後は電話すらつながらず行方不明になってしまいました。結果的に返還された金は持ち逃げされてしまったのです…」
後日、Yさんが調べたところによると、頼んだ業者というのは正式な司法書士や弁護士ではなく『整理屋』と呼ばれるグループだということがわかった。彼らは弁護士などから名義を借りて債務整理を行っている業者で、時にはNPO法人の看板を掲げていることもあり、ピーク時には都内でも100以上の整理屋が存在していたという。
貸金業者から返還された金は直接債務者に振り込まれるわけではなく、一度、手続きを行った司法業者の手に渡ることになっている。この時点で金をネコババしてしまうというわけだ。
実はこの持ち逃げトラブル、何も整理屋に限ったことではない。ある大手消費者金融が全国で追跡調査を行った結果によると、平成24年以降、過払い金請求約2500件のうち、返還したのに債務者に渡っていなかったケースが45件(計約1700万円)あったことが判明した。中には依頼を受けていないにもかかわらず勝手に他人の過払い金返還請求をし、本人の知らぬ間に着服するというトンデモないケースもあった。
そして、追い打ちをかけるように最近、密かに囁かれているのが“名簿”の存在だ。この問題に切り込む地方紙の記者が言う。
「過払い金請求案件は明らかに減少しているのに、特定の法人だけが増えている不可解な現象が起こっているのです。そもそも過払い金請求訴訟は'10年に施行となった改正貸金業法が根拠であって、時効10年を考えても経年で件数が減っていくものと思われていました。しかし、この特定の業者だけが過払い金請求の業績を伸ばしているとなると、先ごろのベネッセ事件で席巻した“流出名簿”の存在を疑わざるを得ません。もしも債務者名簿が流出しているとなれば、いわば恥部だけにベネッセどころの騒ぎではないんですよ」
司法業者への嫌疑が寄せられているウェブサイト『弁護士司法書士トラブルまとめ』をのぞくと、そこにはCMから受ける手軽な印象の“過払い金請求”とは程遠い事例が多く載っている。正義面をしたワルの所業の数々には、開いた口がふさがらない。