なぜなら、表向きは最先端の科学技術を活用した極地研究の拠点とされたキャンプ・センチュリーに、隠された目的があったことは、もはや公然の秘密だったのだ。
古参の未確認飛行物体研究家には、半世紀前の基地閉鎖時点で米軍が真の目的を隠蔽していることを指摘していたとする者もいるようだが、そのような例外を除くとキャンプ・センチュリーの実体が明らかになったのは、デンマークの外交政策研究所が米政府へ資料の照会と開示を要求した1995年のことだった。そして、開示された文書は未確認飛行物体研究者らの予想を裏付けるとともに、それを超える内容も含まれていた。
米政府が開示した当時の極秘文書などによると、キャンプ・センチュリーは米軍が立案したプロジェクト・アイスワームの一環として設置された前哨基地で、計画が順調に進展すれば永久氷河の内部に全長4000キロものトンネル網を構築し、仮想敵国の偵察をほぼ完全に回避できる核ミサイル発射基地となる予定だった。しかし、永久氷河の内部といえども緩やかな氷の流れがあり、トンネルには大きな圧力が加わった。運用開始まもなく原子炉建屋の屋根が崩落し、わずか数年で基地は撤去されたのである。
ただ、撤去されたと言っても基地に運び込まれた装備品の多くや廃棄物などは残置されており、当初は永久氷河に飲み込まれて封印状態となるであろうと予測、あるいは期待されていた。ところが、近年の気候変動によって氷床の一部が溶解し、残置物が表面へ露出する事による、環境汚染が懸念され始めたのだ。
放射性廃棄物による氷河の汚染というニュースに血圧を急上昇させる反核反原発環境活動家とは別に、未確認飛行物体研究者は1995年に開示されなかった新情報が得られるのではないかと、大きな期待を寄せている。
また、研究者には極めて興味深い推論を立てているものもおり、筆者のもとへも匿名の情報源から興味深い仮説が寄せられているのだ。
(続く)