マニュアルでは、現在も噴煙を上げている大涌谷周辺での突発的な噴火を想定。一時的に噴煙口から300〜500メートル付近にあるレストランなど5カ所の屋内に退避し、さらにより安全な場所へ各施設の従業員らが観光客を誘導すると規定した。大涌谷周辺の観光客の滞留者はピーク時で約2800人といい、5カ所で全員を収容できるという。
しかし一方で、こんな不安な声も聞こえてくる。
「そもそも大涌谷にはシェルターがない。要はレストランなどがシェルター代わりなのです。箱根町のHPでは、爆発の力が強いと火口から1.5キロの範囲まで噴石の落下の可能性があるとしていながら、あまりに楽観的なのでは」(地元記者)
武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏も警鐘を鳴らす。
「箱根山は金時山や三国山などを外輪山に持つ火山で、大涌谷は『中央火口丘』といって大きな火口の内部に生じた新しい小さな火山体。つまり別荘もホテルも火山の中にあるわけです。しかも、脱出口となる道は狭い。約3000年前に大噴火を起こしたが、その記憶が風化しているのです。箱根は観光で食っているから、あまり危ないとも言えない。しかし、大涌谷とは別の場所でも噴気が上がっており、噴火の前兆現象が現れているのです」
その噴気は、大涌谷から尾根をひとつ越えた北側の斜面で確認され、位置が次第に移動しているとの話もある。
富士山の噴火が心配されている今、連動して箱根山が噴火することも十分考えられるという。形だけのマニュアルで終わらなければいいが。