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背水の三菱自動車 日産へ身売り5つの根拠

 日産自動車と三菱自動車は先ごろ、両社の合弁会社『NMKV』で共同開発し、来年早々に軽自動車第2弾として発売する『デイズ ルークス』(日産)と『eKスペース』(三菱自)、それぞれの外観写真と内装デザインを公表した。この“奇妙な連携プレー”が、市場の憶測を呼んでいる。
 「これは業界の“常識破り”だ」(市場関係者)

 発売の3カ月も前にデザイン等を公開すると、発売時に新鮮味が薄れ販売に影響する。それを承知で両社がフライングしたのはなぜか−−。
 実は同日、ライバルのダイハツが、人気車種『タント』をフルモデルチェンジして発売した。そこで軽では後発の両社が「後に我々が続くことを忘れるな」と花火をぶち上げた図式だが、この関係者は「もっと深い理由がある」と指摘する。
 両社は昨年、折半出資で『NMKV』を設立、軽自動車の共同開発に着手し、ダイハツとスズキの2強にホンダが猛追する軽市場に参入した。今年の6月に日産は『デイズ』、三菱自は『eKワゴン』を揃って投入したものの、先行3社の壁は依然として厚い。そこで第2弾投入に際し、「今回のような奇策に打って出た背景には、本業での資本提携、もっと言えば三菱自の身売りシフトが加速しているから」(同)というのである。

 決して荒唐無稽な見立てではない。昨年の世界販売がランキング17位(95万台)にとどまり、経営再建途上にある三菱自が単独で生き残れる保障はどこにもない。そのため、日産と軽自動車で合弁事業に着手した時点で「日産を後ろ盾にする作戦。シナリオは三菱グループが描いた」との観測しきりだった。
 実際、三菱自はここへ来て身辺整理を急いでいる。8月には資本金と資本準備金を取り崩し、3月期末に9246億円あった累積損失を一掃した。累損を抱える企業は配当できないが、これで復配への準備を整えた。その上で今年度中に2000億円規模の公募増資を行い、最大の課題だった優先株の大半を処理する。これもまた「もちろんシナリオは、一刻も早く厄介払いしたいと願っている三菱グループが描いたもの」と、先の市場関係者が喝破する。

 優先株は配当を優先的に受けられる反面、経営への関与は制限される。三菱自は2000年と'04年に大規模なリコール騒動から経営不振に陥った際、総額6000億円の優先株を三菱グループの有力企業に発行し、経営支援を受けた。ただ、優先とは名ばかりに一度も配当を行っておらず、これを普通株に転換した会社もある。そのため、三菱御三家(三菱東京UFJ銀行、三菱商事、三菱重工業)などは、今も約3800億円分の優先株を保有している。これを三菱自は「増資マネーで簿価を下回る価格で買い入れて償却し、身辺を整理する段取りになっている」(同)という。当然、御三家との綿密なすり寄せがなければ不可能だ。
 これが日産との軽連合に続く身売りシフトの根拠だが、第3点はスリーダイヤの金看板を抱く企業にしては珍しく、三菱自には外部との提携にアレルギーが少ないことだ。

 同社は'00年に独ダイムラークライスラー(現ダイムラー)から34%の出資を仰ぎ、傘下に入った。ところが次々に不祥事が発覚すると、'05年に“三くだり半”を突きつけられる。三菱グループが全面支援に乗り出したものの、丸抱えリスクを懸念した三菱御三家は、仏プジョー・シトロエングループとの資本提携を模索。しかし、優先株問題がネックになって破談している。
 つまりグループにとっては、軽でタッグを組む日産との“縁談”にも抵抗感がないとの見立てがもっぱらなのだ。
 実際、今年の6月に両社が合弁事業での軽自動車を市場投入した際、日産の志賀俊之COO(最高執行責任者)と三菱自の益子修社長は握手して記者会見に応じている。企業提携はトップ同士の相性が核となるだけに、2トップが“ツーカーの仲”であることは大きなポイントになる。これが根拠の第4点だ。

 第5は電気自動車(EV)である。両社がトヨタ、ホンダの推すハイブリッド車には目もくれず、EV路線を歩んでいることが背中を押す。ただ、急速充電器の普及が遅れていることもあって、日産はルノーと合わせてやっと10万台、三菱自は1万台弱の販売台数にすぎない。
 「とはいえ、両者がタッグを組めばEV市場が活気付く可能性があり、知恵者揃いの三菱グループ首脳が策を弄さないわけがない。相次ぐリコール騒動を起こしたグループの“恥さらし”三菱自を売り払って初めて安心できる。既に外堀を埋めた今、もう手段は問いませんよ」(前出・市場関係者)

 果たして、日産のカルロス・ゴーン社長にどんなアメ玉を用意するのか。けだし見ものである。

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