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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 消費税引き上げと同じ構図

 10月1日から環境税が導入された。地球温暖化の原因となる石油、天然ガス、石炭など全ての化石燃料に対して、二酸化炭素排出量1トンあたり289円が上乗せ課税される。環境税の課税は化石燃料だけだが、発電に化石燃料を使用している電力会社も、電気料金に環境税分を転嫁せざるを得ないため、電気代も上がる。東京電力は、すでに今回の料金引き上げに組み込んだが、他の電力会社も追随する見通しだ。

 大きな負担がかかる増税であるのにかかわらず、メディアは大きくとり上げていない。環境への国民の理解が深いからかもしれないが、一番大きな理由は、増税の規模が小さいことだろう。政府の試算では、今年度の環境税の増税規模は、391億円にとどまる。しかし、環境税の税率は、今後3年半の間に2回引き上げられ、最終的な増税規模は、2623億円となる。かなりの規模の増税なのだ。
 それでも、政府は大きな規模の増税ではないということをアピールするために、税率引き上げが完了した最終段階でも、家計負担増は、年間1228円にとどまるとしている。「地球環境を守るためなら、それくらいは仕方がないか」と思わせる負担額だが、この試算にはカラクリがある。

 実はこの試算は、平均的な家庭が使う石油やガス、電気の料金がどれだけ上がるかを計算して合計したものに過ぎないのだ。
 環境税は、家計だけでなく、すべての産業のコスト増になる。エネルギーを使わない産業はないからだ。そうしたコスト増を企業は最終的に消費者に転嫁せざるを得ない。そうすると物価が上昇し、家計が負担するのはエネルギー価格の上昇だけではなくなるのだ。
 正確な家計負担を算出するのは難しいが、単純計算として、最終的な増税額である2623億円を世帯数(5196万世帯)で割ると、年間の家計負担額は、5049円となる。かなりの負担増だ。

 これだけの負担増をしても、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が大幅に減るのなら、まだ報われる。しかし、環境省のホームページをみると、その効果は驚くほど小さいのだ。環境税導入で、化石燃料の価格が上昇し、省エネが進む効果(価格効果)は、2020年時点で、わずか0.2%に過ぎない。もちろん、環境税の税収を二酸化炭素排出抑制のための施策に活用することによる削減効果は、0.5〜2.2%と見込まれており、それなりの効果はある。
 ただし、環境税の税収は、特別会計で管理されるわけではなく、他の税収とともに一般会計に入る。だから、環境対策に使われる保証はどこにもないのだ。

 この構図は、消費税率の引き上げと全く同じだ。消費税の場合は、社会保障制度の充実のために使うのだと言って、引き上げ法案を強行した。しかし、本当に社会保障の拡充に回されるのは1%分のみで、残りの4%は何に使われるのかわからない。だから自民党や公明党は、その財源を当て込んで100兆円規模の国土強靱化投資をしようとしている。
 環境税も同じだ。政府はもともと再生可能エネルギーの開発・普及促進をやろうとしていた。そこで、そうした施策に環境税をあてたことにすれば、環境税は、まるまる増税分として財務省の懐に入るのだ。果たしてそんな手品のようなインチキ増税を許してよいものだろうか。

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