牛丼好きの人なら『すき家』の親会社とすぐにわかるはずだ。
正式名称はゼンショーホールディングスで『すき家』のほか『なか卯』『COCOS』『華屋与兵衛』などの飲食店を傘下に所有。グループ店舗は4500店、全店舗の売り上げが4029億円('12年3月期)にのぼる巨大飲食チェーンである。
そのゼンショーが、フジ・メディア・ホールディングス(フジMHD)から、同局が保有する産経新聞株の売却をもちかけられたというのだ。報じたのは『週刊ダイヤモンド』(2013年5月25日号)で、波紋を広げている。
フジMHDは産経新聞株の40%を保有する筆頭株主。記事によると、同社が産経新聞の株を売りに出したのは'12年5月頃の話だったという。
「40%すべてゼンショーに、ということでもなかった。何社かに分けて話が持ち込まれたようです」(業界事情通)
結局、ゼンショーが首を縦に振らなかったため、話はお流れになったというのだ。
もともとフジMHD内にとって産経新聞は親会社的存在だった。だが、産経の経営難から力関係は逆転。いまはフジが広告面で産経の面倒をみている。その株を売るということは、見限ったということか。
もしこれが事実であれば、TBSに続いて、新聞社とテレビ局との経営構図が大きく崩れることになる。
「全国紙の新聞社内では、この情報はまわっていたが、同業者同士のネガティブな話は扱わない、という紳士協定から記事にもされず放置されていたようです」(前出・業界事情通)
フジMHD、産経新聞、ゼンショーの3社はいずれも株売却話については「そういう事実はありません」と否定している。ただ、報じた『週刊ダイヤモンド』は、「記事には自信がある」と譲らない。
それにしても、フジMHDは本当に産経株をゼンショーに売却しようとしたのか。首を傾げざるをえない。
基本的に、テレビなどのマスメディアが関連会社株を売却する場合は、外食産業のような関係が薄い企業に売ることはない。仮に景気が悪化した場合、不都合な企業などへ転売される可能性もあるからだ。
今回の場合、懇意にしている東宝あたりに話をもっていけば、すぐにまとまったはずだ。騒ぎによってダメージを食らったのは産経新聞だけで、いまやその経営実態に関心が向けられている。