金田専務理事はトヨタ出身。同社では広報畑が長く、'06年に理事としてNHKに入った。そして、'08年に専務理事に昇格。昨年、JR東日本の社長出身である松本正之氏が会長になったときは、出世ラインの放送総局長も兼務していた。
「松本会長と金田専務理事は、名古屋大学の同窓生。そのため単身でNHKに乗り込んだ松本会長は当初、金田氏を頼りにした。人事の要である放送総局長にもってきたのがその証拠です」(NHK関係者)
だが、結局はソリが合わなかったようである。
「切られたのは、金田氏の国会答弁があまりうまくなかったのも一因といわれている。“腹芸”ができないのです」(前出・関係者)
番組で“事故”があり、松本会長が激怒したのが理由との指摘も。
「昨年11月半ばに、NHKEテレの料理番組『楽ごはん』で、グラビアアイドルの手島優が胸元の大きく開いたエプロン姿で出演した。これに対し、視聴者から抗議が殺到した。エロい公共放送なんか観ない、と受信料不払いの口実に使われたのです。松本会長も弱り果て、最高責任者の金田氏に厳しく注意したという。そのあとすぐに金田氏は定例会見で『度を越した不適切な演出だった』と謝罪している」(NHK担当記者)
だが、本当の理由は、人事抗争劇と見るむきは少なくない。
「金田専務理事が力をつけて会長ポストを狙っているので、松本会長が煙たがり始めた。副会長昇格の話さえ出ていましたから」と前置きし、先の担当記者はこう言う。
「金田専務理事のバックには、トヨタ社長・会長を歴任し、このほど国際協力銀行総裁に就任した奥田碩氏がいる。その奥田氏は、まだNHKトップ人事に強い影響力がある。会長を金田専務理事にする可能性はかなり高かった。そこで、松本会長は長期政権を維持するため、その芽を早めにつんでしまおうと金田専務理事を退任に追い込んだという。奥田氏とはかなりもめたようですが、現役会長の発言力の方がフィクサーよりも強かったということです」
新しく専務理事になったのは塚田祐之、吉国浩二両理事で、放送総局長には石田研一氏が就任。金田専務理事が独り占めしていたNHKの権力は分散された。