search
とじる
トップ > 社会 > 8年ぶり軽首位 スズキに忍び寄るトヨタ 驚愕の“乗っ取りシナリオ”

8年ぶり軽首位 スズキに忍び寄るトヨタ 驚愕の“乗っ取りシナリオ”

 「好事魔多し。これで美酒の後、修羅場に見舞われたら目も当てられない」
 市場関係者が複雑な視線をスズキに向けている。

 美酒とは2014年暮れのギリギリまで続いた国内軽自動車のシェア争いで、スズキが8年ぶりに首位を奪回したこと。全国自動車販売協会連合会が1月5日に発表した'14年の軽自動車販売統計によると、7年連続トップだったダイハツ工業は前年比7%増の70万6288台(シェア31.1%)。これに対し、スズキは13.9%増の70万9083台(同31.2%)と、2795台上回った。
 まさに僅差の首位奪回である。その原動力となったのは年初に投入した多目的スポーツ車『ハスラー』だ。遊び心のあるデザインが好評で、若者など新たな顧客層を開拓したことが大きい。実際、消費増税前の1〜3月はダイハツが'13年12月に投入した『タント』のヒットもあってトップを独走したが、それ以降はスズキが月間首位をキープし続けた。年末にはダイハツが主力の『ムーヴ』新型6代目を発表してトップ死守をもくろめば、スズキもセダン型『アルト』を全面改良して追い込みを図るなど、土壇場まで両社が意地とメンツの張り合いを演じた。
 結果、国内新車市場に占める軽自動車のシェアは前年比1.6ポイント増の40.9%となり、史上初めて軽が暦年ベースで総販売台数の4割を超えた。高齢化が進み、今後とも軽に乗り換えるユーザーが増える見通しとあって「グループにダイハツがあるとはいえ、軽と距離を置くトヨタも内心は戦々恐々としている」と業界筋は打ち明ける。

 そこで冒頭の“修羅場”である。スズキはドイツのフォルクスワーゲン(VW)との提携解消を求め、国際仲裁裁判所で係争中だ。両社は'09年12月にVWが2000億円を投じてスズキの株式19.9%を取得、ハイブリッドや電気自動車などの環境技術と新興国での販売拡大などで提携したが、VWがスズキ乗っ取りの野心をギラつかせたことから関係がこじれ、スズキが'11年11月に資本解消=株買い戻しを求めて国際仲裁裁判所に調停を申し出た。
 同裁判所は既に双方からの聴取を終え、当初は'14年暮れにも司法判断が下るとされていたが、今年にズレ込んだ。スズキの思惑通り自社株を買い戻すことができれば問題はないが、そう都合よく運ぶ保証はない。むしろ判断が先送りされたのは「スズキに不利。もし言い分を丸呑みするならば、もっと早く結論が出たはずだ」との厳しい見立てさえ飛び交っている。

 これでVWによる株式の継続保有に“お墨付き”を与えれば、VWが敵対心をあらわにしてスズキ株を一気に買い増すのは必至。その場合、軽自動車でトップの座に躍り出たばかりのスズキは一転、乗っ取りの危機に直面する。
 逆に世界戦略を図る上で企業イメージを損ないたくないVWが保有株を第三者に売却するならば、イタリアのフィアットが名乗り出るのは確実だ。同社はスズキにディーゼルエンジンを供給しているだけでなく、米クライスラーを買収した野心家のセルジオ・マルキオンネCEO自身が以前からスズキに激烈なラブコールを送っている。

 要するにVWであろうとフィアットであろうと、外資が本気で牙を剥けばスズキは乗っ取りの危機に直面する。そんな事態になれば、日本の自動車産業には大ダメージだ。誰がスズキの非常事態を救うべく、白馬の騎手(ホワイトナイト)として登場するのか。大手証券マンが言う。
 「救済の切り札として参戦するとなれば資金力で勝るトヨタしかないでしょう。経済産業省が水面下でプッシュしているとの情報もある。軽は将来性があるし、300万台の大台に迫るスズキの世界販売も魅力。グループのダイハツと統合すれば、軽では圧倒的なシェアを握る。問題はどのタイミングで御曹司(章男社長)がGOサインを下すかです」

 そのトヨタは新年早々、世界で保有する燃料電池車(FCV)関連の特許約5680件を全て無償で提供する、と発表した。大英断の狙いは、FCVへの参入メーカーが相次げば1基5億円とされる水素ステーション建設が急加速する上、トヨタがFCVの統一規格で主導権を握れることだ。それどころか各社が特許を取り入れたころには技術で勝るトヨタが一歩も二歩も先んじており、同社の優位は微動だにしないとのシタタカな読みもある。
 「それを究極の美談でカムフラージュし、太っ腹なトヨタを世界にアピールしたあたり、御曹司もすっかり知恵者になった。やっと側近にも恵まれてきたのでしょう」(トヨタOB)

 これでスズキが窮地に追い込まれた場合、内心では「千載一遇のチャンス」と小躍りするであろう御曹司が、どう美談の人を演じるか見ものである。

社会→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

社会→

もっと見る→

注目タグ