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内憂外患 三越伊勢丹離婚寸前!? アパレルとの軋轢、社員相互不信、JRへの反発…(1)

 全国の主要デパートには、今年も初売りの福袋を求める買い物客が大勢押し寄せた。このタイミングに合わせて冬のバーゲンセールに踏み切る店舗が相次いだのも、いつもの通りである。
 ところが三越伊勢丹ホールディングスだけは、そんなライバル各社を尻目に、バーゲンの時期をほぼ半月遅れの1月18日にずれ込ませた。昨年2月に就任した大西洋社長は、かねてから「デパートをセールに頼らない体質に変え、価格への信頼を取り戻す」が持論。そこで昨年夏のバーゲンセールを通常よりも半月遅れの7月半ばに実施したが、予想に反して7月、8月とも減収だった。
 「例年ならばデパートが一斉にセールになだれ込むのですが、大半のライバルは従来通りに実施したことから逆に客が混乱して商戦が盛り上がらず、業界全体で見ると散々だった。これに懲りた有力アパレルメーカーのオンワード樫山が、冬セールでは『初売りと同時開始』をぶち上げ、他のアパレルが追随したのですが、頑固な大西社長は持論にこだわり、再び後ろ倒しを決断した。お陰で商品を供給するアパレルからは『あの真夏の悪夢が再現するのでは』との悲鳴に近い声さえ漏れています」(経済記者)

 アパレル各社は昨年夏、予想外に在庫を抱え込んだ。最大手のオンワード樫山では、セール開始前に正価品の拡販を狙って機能性の高い夏物衣料を前年比5割増しで準備したが、結果は「大幅な見込み外れだった」(アパレル関係者)。他社も軒並み討ち死にで「9月に入っても夏物セールの売れ残り品が婦人服売り場に山積みになっていた」(同)などの悲惨な状況が随所で報告されたという。
 「それぐらいだからアパレルには『もう三越伊勢丹に追随するのは御免被りたい』の気持ちが強い。今回の冬セールだって、渋々応じたのが実情。そんなアパレル側の本音を察知したのか、三越伊勢丹は今年から委託工場を通じた衣料品の自社生産を始める。これではセール後ろ倒しに消極的な我々と縁を切る布石としか映りません」(同)

 三越伊勢丹は現在、衣料品の大半をアパレルメーカーからの供給に依存している。売れ残れば返品できるが、自社生産の場合は利益率が10ポイントほど改善するとはいえ、在庫リスクを抱える。それを承知で“脱アパレル”に舵を切るのは「セールの後ろ倒しに抵抗するアパレルへのけん制の意味がある」と三越伊勢丹ウオッチャーは指摘する。
 だが、そんな大西社長に真っ向から挑戦状を突き付ける動きが相次いだ。名古屋三越とJR大阪三越伊勢丹が「冬セール、1月18日実施」の大方針に背き、1月2日から冬セールを断行したのである。
 ライバルとの顧客争奪戦に勝ち抜くための抜け駆けといえば聞こえは良いが、要は大西社長に対し、腹心中の腹心が「殿、ご乱心」といさめた図式だ。これに大西社長がどう応じるか。その決断次第では、三越伊勢丹の“奥の院”が激震に見舞われないとも限らない。

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