「組織が固い公明党や共産党は自前のウグイス嬢がいるので、私たちのビジネス相手は自民、民主、無所属といったところです」
と言う、大は国政レベルから小は市町村レベルまでこなすウグイス嬢歴30年のベテランF子さんに、知られざる実態を語ってもらった。彼女自身の本業は“プロの司会者”。他にはバスガイドのアルバイトルートが多いらしい。
F子さんによると、派閥選挙が幅を利かせていたころは選挙資金も潤沢で、それなりに実入りもよかったが、小選挙区導入後は資金の削減、小党化、有権者の政党離れなどからウマ味も少なくなったという。そのため、限られたパイを巡り、壮絶なバトルが演じられているのだとか…。
「だから、実は枕営業も少なくないんです。もちろん、相手は候補者ではありません(笑)。側近や選対の参謀格に取り入り、肉弾戦法で仕事を獲るのです」
選挙は短期決戦。毎日朝の8時から夜の8時まで、頭を下げつつ同じセリフを連呼する対価は、20万円そこそこと微妙。それでも希望者は多いらしい。
「20代30代は、まだまだ素人。それなりの経験を積まないと、同じ『お願いします』でも、振り向かせる人数が違いますよ」
電柱やポストにも手を振るぐらいの熱意と誠意を見せなければ、有権者の心には響かない、とF子さんは語る。さらにベテランともなると、マイクの使い方、声の出し方、身振り手振り、聴衆との間合いなど、勝つためのパフォーマンスまで候補者に指南するという。
「このレクチャー代が、実はベテランにとって大きいのです」
ウグイス嬢も必死だ。