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民間企業が続々参入 加熱する宇宙ビジネス主導権争い

 7月30日、北海道室蘭市から南に約50キロ、人口6000人足らずの街、大樹町に、日本中の熱い視線が注がれた。ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が創業した宇宙ベンチャー企業『インターステラテクノロジズ』が、国内初の民間企業単独での開発ロケットの打ち上げに挑んだからだ。結果的には通信トラブルで失敗に終わったものの、サイエンス誌記者はこう言う。
 「失敗とはいえ、この試みは画期的なこと。オール自社開発で、総コストは公表されていないが、資金はクラウドファンディングで集められた約2200万円がベースとなっている。これまで日本で打ち上げられたロケットといえば、JAXAのH2A機では、開発費約1500億、打ち上げに50億円前後。その高コストが民間の宇宙ビジネス参入の大きなネックとなってきたのです。それを堀江氏が、今回の観測用ロケット『MOMO』によりもう一歩のところで引っ繰り返そうとしているわけですからね」

 ただし、この『MOMO』の成功を待たずしても、世界の宇宙ビジネスはヒートアップしているという。
 「世界の宇宙航空市場規模の拡大がそれを表しています。内閣府の調査では、全世界で約23兆円。年3%前後の伸びで、日本でも1.2兆円からさらに増えつつある。日本の国内外で、宇宙ビジネスへの期待値が大いに高まっているのが現状です」(ベンチャー企業関係者)

 ロケット開発と打ち上げの高コスト破壊の先駆けとなったのは、やはりアメリカ。今、最も注目を集める電気自動車企業、テスラモーターズのCEOでもあるイーロン・マスク氏が'02年に創業した、宇宙ビジネス企業のスペースX社だ。
 「スペースX社は、あらゆる面でコストカットし、打ち上げにかかっていた120億円以上を半額近くまで引き下げ、さらにロケットの再利用に成功。2回目からの打ち上げ費を1億円前後まで落とすことを可能にし、宇宙ビジネスを活気づけたのです」(同)

 その宇宙ビジネスは、大きく分けて6つの分野がある。
 「まず、堀江氏の『インターステラテクノロジズ』に象徴されるような、ロケット製造、衛星など、ハードやソフト分野での産業。さらに、衛星を使用して通信、放送、さらにはGPS分野となる。GPSにおいては、JAXAが打ち上げた衛星『みちびき』が来年にも運用を開始し、例えば、無人トラクターが農業をする時代も現実味を帯びています」(前出・記者)
 また、不要な衛星などの宇宙ゴミを取り除くスペースデブリでの分野、宇宙葬や人工流れ星を出すなどの派生型分野、スペースX社のマスク氏が近未来での実現を目指す火星移住計画を含めた旅行分野、日本技術がトップを走っているとされる宇宙での太陽光発電分野がある。

 世界の宇宙ビジネス機運の盛り上がりを背景に、国内各企業の動きも活発化している。
 中堅商社の兼松は、宇宙ベンチャー、ベクター社(米)と今年2月に提携。ベクター社が打ち上げる衛星用小型ロケットの使用を日本企業に売り込む。
 「'18年以降にサービスを開始予定で、最大の特徴は大型ロケットの50分の1という超安価なコストにある。日本円にして約1億7000万〜約3億4000万円というから驚きです」(商社関係者)

 今後、重さ50㎏以下の超小型衛星の需要が急増すると見られる。これまでは衛星を使いたい企業が多額の費用をかけた大型ロケットを使用し、他社と乗り合いをしていたが、今後は低価格ロケットでビジネスチャンスに合わせて打ち上げられるのだ。
 もちろん、その小型衛星専用のロケット開発についても、日本企業が乗り出している。
 「キヤノン電子や、日本の宇宙開発に一貫して技術提供してきたIHIエアロスペース・エンジニアリング、さらに大手ゼネコンの清水建設、旧日本開発銀行の日本政策投資銀行などが共同で開発に着手する動きを見せています」(同)

 一方で、東大、東工大で宇宙工学に携わった学生らが起業したアクセルスペースでは、超小型衛星の開発で“ジャパン宇宙ビジネス”の突破口を開こうと奮闘中だ。
 「世界一の富豪となったアマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏も宇宙企業を立ち上げ、開発を続けていたロケットが3月、ベールを脱いだ。90メートル級の超大型、しかも再利用する一段目は逆噴射での着陸で回収できるという。ベゾス氏の野望は当然、月などに移住した人々への宅配なのでしょう」(開発企業関係者)

 あらゆる技術、商法を尽くし、どう宇宙ビジネスにかかわっていくか。日本でもその主導権を握ろうと、水面下で激しいつばぜり合いが始まっている。

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