楽天は「欧州事業の再編」と口を濁すが、関係者は「赤字の垂れ流しで将来展望が描けなかった。そこで、サッサと見切りを付けた」と解説する。今後、欧州ではドイツ、フランスでの事業強化にシフトする戦略だ。
「ところが…」と関係者が苦笑して続ける。
「去年の12月決算で楽天は営業利益が11%減の大幅減益だった。足を引っ張った元凶がフランスとカナダの事業でした。フランス事業の立て直しは結構だが、ライバルも多い。これで返り討ちに遭ったら、三木谷浩史社長は世界の笑い物になります」
実は楽天の誤算は欧州だけではない。4年前には中国の検索会社、百度(バイドゥ)と鳴り物入りで立ち上げたネット通販事業を業績不振から閉鎖した。その経験を生かすべきだったが、ワンマン経営の下ではそうもいかず、今年3月にはシンガポール、インドネシア、マレーシアからの撤退も決断。タイの通販サイトに至っては4月に売却している。
東南アジアからの撤退には笑えぬ話がある。社員の解雇を発表したのは旧正月に当たる2月だった。各国とも旧正月を家族そろってのんびり過ごすのが一般的。そのさなかに解雇通知がなされれば、社員が激怒しないわけがない。一部の地元メディアは楽天批判のキャンペーンを張るなど現地は熱くなったという。
「お坊ちゃん育ちの三木谷社長は、何事も自分中心で考える。他人の痛みを理解できない点が最大のウイークポイント。トップリーダーとしての資質が問われます」(楽天OB)
そもそも楽天が海外に打って出たのは、少子高齢化が進む日本よりも、彼の地が“宝の山”に映ったから。そこで、英語公用語化を旗印に進出を図った構図である。
「見るも無残な敗残兵と化した海外とは対照的に、国内の楽天市場や楽天カード、楽天トラベル等は好調で屋台骨を支えている。全く皮肉なものです」(証券アナリスト)
英語の達人ウンヌン以前に、身の丈に合った経営こそ急務ではないか。