「SLBMの脅威はICBMに匹敵します。仮に北朝鮮が他国の先制攻撃を受けても、潜水艦に搭載したSLBMの攻撃戦力で相手国に報復攻撃ができるからです。日本はすでに集団的自衛権の行使に踏み込んでいます。同盟国の米軍にミサイルを撃ち込むかもしれない潜水艦が目の前を通過しようとするとき、それを先制攻撃して撃沈すべきとする要求をはねつけられません。北朝鮮の潜水艦は、海自が沈めることになるでしょう」(元1等海佐)
とはいえ、北朝鮮の“悲願”はあくまでもICBMの実戦配備。そのために越えなければならない今後のハードルは次の5つだ。(1)固体燃料化、(2)コールドローンチ方式、(3)移動式発射装置の国産化(現在は中国製)、(4)ミサイル3段式の実現、(5)核弾頭の小型化で、ある意味ここが“レッドゾーン”なのだが、そこに新たな脅威が浮かび上がった。米当局者によると、北朝鮮は現在、水素爆弾開発に取り組んでいるというのだ。そこで、日本にとってのトラウマ“1971年の悪夢”がよみがえる。
「なぜ正恩委員長はグアム攻撃をやめたのか。その理由として、ティラーソンとマティスが8月14日付の米経済紙に連名で寄稿し『米国には対話の意思がある』と強調したからとも考えられます。正恩がグアムの脅しによって『対話』を引き出したと理解し、味を占めたとしたら、次に嘉手納や三沢を標的にすると言い出して、日本を人質に米朝対話を実現させようとするかもしれません」(前出の軍事ジャーナリスト)
これも悪夢には違いない。しかし、“1971年の悪夢”とは、日本の頭越しに米中が秘かに合意し、米中正常化に向けて米大統領の訪中計画が電撃的に発表された、いわゆるニクソン・ショックのことだ。
「トランプの背後には、ニクソンおよびフォード政権期の国務長官、親中派のヘンリー・キッシンジャーの影がチラついており、北朝鮮問題で米中が“大国益”によって結び付く可能性はゼロではありません。端的に言えば、北の核保有を認める“容認論”です。インドやパキスタンと同じ扱いにして“核クラブ”に入れてやる代わり、ICBMと核の小型化だけはやめろという足かせをはめようというものです」(外交関係者)
ナチスがチェコスロバキア(当時)を侵略した際、平和主義者として知られる英首相チェンバレンは、ナチスと衝突するのではなく、彼らの要求に応える“宥和政策”を打ち出した。時のメディアはチェンバレンを英雄視したが、その後、第2次世界大戦へと突き進んだのは歴史的事実だ。
トランプ大統領の態度を見れば、同じ過ちを犯すとは思えないが…。