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キャンプ・オープン戦中間報告「阪神」 新人・榎田が先発人材難を救えるか…

 真弓明信監督(57)は外野守備を大事にしている指揮官だと思った。昨年秋から、内野手の坂克彦(25)が外野の守備練習を始めたのは聞いていた。内野の現レギュラー布陣は「一塁・ブラゼル、二塁・平野、三塁・新井貴、遊撃・鳥谷」。平野恵一(31)は外野でスタメン出場しているように、何処まで守れるユーティリティー・プレーヤーではある。しかし、この内野布陣に割って入るのは並大抵ではない。坂の打撃には定評がある。近鉄、楽天時代から守備センスも買われており、「広い守備範囲の見込める選手」を外野で起用していくつもりなのだろう。
 しかし、ベテランの多いチームだからか、キャンプは全般的にスロー調整だった。

 新戦力は小林宏之(32=登録名は「小林宏」)、藤井彰人(34)、新人選手とトレード加入の新井良太(27)…。繰り返しになるが、近年は外部補強が多かったせいか、今季はプラス材料が少なく見える。昨季、終盤8回に81点も失った。一昨年が40失点だから、守護神・藤川球児(30)に繋ぐセットアッパー役として、小林宏之を得たのは大きい。しかし、もう1つの弱点は補われていないようだった。先発投手の頭数すら足らなくなるのではないだろうか。
 久保康友(30=14勝)、能見篤史(31=8勝)、スタンリッジ(32=11勝)はともかく、4番手以降には不安要素が多すぎる。左肘の故障で昨季を棒に振った岩田稔(27)は、何処まで回復したのか未知数だ。新人の榎田大樹(24)は賛否両論。不振で中継ぎ、二軍落ちの屈辱も味わった安藤優也(33)、あとは、メッセンジャー(29=5勝)、昨季途中で息切れした鶴直人(23=2勝)、二軍スタートとなった秋山拓巳(19=4勝)くらいだ。不本意なシーズンが続いている上園啓史(26)、昨季途中からスリークオーターに転向した小嶋達也(25)、ベテラン・下柳剛(42)も候補に入れなければならないだろう。

 しかし、阪神は「打撃のチーム」だ。絶対的な守護神・藤川もいる。たった1点でも、リードした状況で最終回の守りに入れば、なんとかなる。4番手以降の先発投手は「最低限の仕事」をしてくれればいいのである。「最低限の仕事」とは、責任イニングの5回を投げきること。昨季は5回までもたずに降板した試合が36試合もあった。うち、3回ももたなかった試合は13試合(12球団ワースト)。榎田の第一印象だが、ストレートはあまり速くない。キャンプ序盤のブルペンだったので、変化球はほとんど投げていなかったので、精度に関する論評は避けるが、コントロールは良い。低めにもしっかりと、「ストレートと同じ腕の振り」で変化球を投げ込んでくる。その点では、「実戦向きの左腕」であり、最低限の仕事はしてくれるはずだ。ただ、投球モーションが気になった。振りかぶった後、首をすぼめるようにして両腕を開く。179センチと恵まれた体格をしているのにダイナミックさが感じられない。プロ野球解説者たちが「投げてみなければ分からない」と言うのはそのせいだろうか。

 高知県・安芸にキャンプ地を移した後だが、「凄い!」と思ったのが、ドラフト5位の荒木郁也(22=明治大)。投手と捕手以外は何処まで守れるユーティリティー・プレーヤーで、東京六大学でショートとセカンドの両方でベストナインにも選ばれている。「足が速いこと」はドラフト当時も伝えられていたが、ハツラツとしていて、中日・井端、西武・中島にも似たタイプだ。守備、走塁では即戦力なだけに、もうちょっと打撃力が欲しい。センターでのスタメンが予定されている藤川俊介(23=登録名は「俊介」)、前田大和(23=登録名は「大和」)もそうだが、スピード感のある若手もいる。坂の外野コンバートもそうだが、真弓監督は『俊足、堅守チーム』の近未来像を描いているのではないだろうか。

 打線は主砲・金本知憲(42)が何処まで回復してくるのか分からない。4番は新井貴浩(34)で固定すると思われるが、気になる点も1つ。城島、鳥谷、平野などレギュラー陣は昨季、過去最高の数値を残している。マートンにしても、大きく沈むとは考えられないが、2年連続200本安打までの期待はできない。新・1番として期待の掛かる藤川俊介が「3割5分強の出塁率を記録すれば」とは思うが、林威助(32)、葛城育郎(33)、桜井広大(27)らの放つ打球はフリー打撃でも「伸びる」。彼らとの併用になるのではないだろうか。林たちが成績ダウンの予想される城島たちをどう補うか、注目したい。
 その城島健司(34)は急ピッチで調整を続けており、開幕戦も「出る!」と言っているらしい(3月12日時点)。長期化も懸念された左ヒザの状態はかなり良いらしいが、FA獲得した藤井を使わないのはもったいない気もする。藤井は楽天時代、“岩隈のご指名”を受ける日も多かった。リード面に優れた捕手というより、「投手が投げたいと思っているボールを投げさせるタイプ」だと聞く。一昨年までの矢野燿大(現評論家)、城島は「オレに付いて来い」のタイプ。違うタイプの捕手が入ることで不安要素の多い先発投手陣が覚醒するかもしれない。不振の安藤、野口寿浩喪失後(現・評論家)、精彩を欠く上園あたりとは相性を試してみるべきだろう。その藤井がキャンプ中、声を出すなど存在感をアピールしないのはちょっと気になったが…。

 オープン戦の打撃陣の不振は、真弓監督も覚悟していたと思う。ベテランの多いチームは調整だけでなく、本領を発揮し出すのも遅い。前半戦は勝率5割。交流戦半ばから打線に火が点くのではないだろうか。
 4番手以降が先発する日はそれなりの失点を覚悟しなければならない。打線は昨季ほどの爆発力はないものの、「機動力」を持った俊介、荒木が頭角を現しつつある。技巧派左腕・榎田が千葉ロッテの成瀬のような変幻自在の投球術を見せてくれれば、阪神は中日の連覇を阻む最有力候補だろう。(スポーツライター・飯山満)

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