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福島原発「作業員6000人」の現実 最終弾 ジャーナリスト・水石徹 消えない放射能の疑い! 作業員に発症した深刻な病名(2)

 ただただ呆れるしかないが、放射能汚染水のタレ流しが相変わらず続く。
 昨年8月に地上タンクから漏れ出した汚染水は、ベータ線を出すストロンチウム90などが超高濃度の4億1000万ベクレルと判明。それが発覚当初の東京電力発表は、半分の2億ベクレルと過小評価。

 2011年3月の事故発生以来、国民はおろか専門家の間でさえ「何がホントで何がウソかわからないのが国や東電の発表」と言われ続けてきた。
 最悪のメルトダウン(炉心溶融)の事実が最初からあっても、「事実無根」と否定し、大量の放射能漏れがあっても、
 「直ちに健康に悪影響を及ぼすとは言えない」
 と国民を愚弄する曖昧発言の繰り返し。

 雨水保管タンクから放射能汚染水が漏れた問題では、原子力規制委員会の田中俊一委員長が今年6月、
 「持続、安定性のある対応ができず、その場限りの対応を繰り返している」
 と東電の汚染水対策を批判。トリチウム(三重水素)など放射性物質の海への排出がこの先も続く。

 この7月には、排水量を測定する流量計の表示が消える事態が起き、これは東電社員の人為ミスと判明。その前日には、使用済みの核燃料プールを冷やす配管バルブ付近から水漏れがあり、それにはコバルト60が含まれていた。
 「福島県沖の魚なんか食べたくない、と思うのは当然だろ。サンマ大好きだが、それも食べない」
 と話すのは、先の桜井さんとは別の原発作業員・西島洋平さん(仮名)。所属する下請け会社は違うが、同じ東日本出身で、事故原発で働き始めて1年以上になるという。

 海へ流す放射能汚染水の濃度が、「排出基準値を下回っている」と東電がいくら言い張っても、消費者は信用しないはずだ。試験操業で何十種類もの魚が福島県沖で水揚げされているが、いまも基準値(100ベクレル/kg)オーバーの魚が見つかっている。
 汚染水のタレ流しが続く限り、消費者の信頼を勝ち取る秘策なんかないんだ。そんなこと、漁師だってわかっているはず。そんなわかりきったことを東電が性懲りもなく続けているから、漁師が怒るのは当然だ。

 俺たち原発作業員も消費者には違いないが、一般消費者とは訳が違う。タレ流しを続ける事故原発で働いていると、福島県沖の魚だけでなく魚そのものが食いたくなくなるんだ。
 どうしてかというと、タレ流しは事故やミスではなく、わざとやっているんじゃないかと思うときがあるんだよ。そう思っているのは、俺だけじゃない。作業員6000人のうち何割が、という数字までは出せないが、俺が知る限り、かなりの数の作業員が「タレ流しはわざと−−」という認識を持っている。
 上にすぐ密告するヤツがいるんで、本音はなかなか出したがらないが、その認識だけは一致してしまう。なぜ、そんな認識を持ってしまうのか−−。

 実は、配管のバルブが4つ開いていたことがあって、そこから汚染水が流れ出た。たった一つなら、「ミスだ」と言われれば、「あっ、そう」と聞き流すこともできる。でも4つも開いていて、「ミスだ」はないだろ。
 だから、間違ったフリをして、だれかが開いたのだろうと思ってしまう。いったん、海にタレ流した放射能汚染水は回収できるわけがない。油と違って、色も臭いもないんだから。
 要するに“流すが勝ち”ってわけだ。バカをみるのは漁師と消費者ということ。
 それなら、流さずに済むのかというと、そうはいかない。汚染水の保管場所がなくなっていくんだから、海に放出するしかない、それが現実だ。海で拡散されて濃度が薄まる−−それに期待するしかないのが現状。もはや、どうにもならないってわけだ。こんなことが、これから先何十年も続くと思うと、気が遠くなるよ。

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