「ソニーは、オリンパスにラブコールを送っていたテルモ、富士フイルムなどを押しのけて提携にこぎ着けた。水面下のアタック攻勢は語り草になっていますが、実はソニーに決定する前の段階で、平井社長はソネットへのTOBを発表している。ソネットは医薬品情報サイトを運営するエムスリーの5割超の株式を持っているため、その時点で平井社長は医療ビジネスにソニーの命運を託そうとしていたのは明らかです」(ソニー・ウオッチャー)
ちなみにソニーとオリンパスの提携発表は昨年9月28日。一方ソニーがソネットへのTOBを発表したのは8月9日のことだ。言い換えれば平井社長は、昨年夏の早い段階でオリンパスとの交渉に十分な手応えをつかんでいたことになる。ウオッチャーが指摘する。
「いくら音楽畑出身の平井社長とはいえ、ソネットへのTOBで611億円を投入するに当たって彼なりのソロバンをはじかないわけがない。投資マネーの何倍かのリターンを考えたとすれば、DeNAだって活用策はいくらでもある。それどころかソネットの完全子会社化をステップに、プロバイダーではライバル関係にあるニフティの買収を仕掛けるのではないか、との観測が当時から囁かれている。ニフティは6割超の株式を保有する富士通の財政が厳しく、株の肩代わり先を物色しているらしい。だからソニーが飛びつき、今後はインターネットと医療ビジネスに活路を求めないとも限りません」
繰り返せば、それもこれもテレビの赤字垂れ流しに象徴されるように、ソニー本流の電機事業が不振を極めているためだ。それでも同社は新年早々、ラスベガスで開かれた家電見本市に“ポスト液晶”と期待される有機ELテレビの試作品を公開し、平井社長は「2年先を見据えた商品開発の成果が出てきた」と強調するのを忘れなかった。
「これまでソニーは『テレビは来年、黒字になる』と強気な言葉を口にしながら市場の期待を散々裏切ってきた。おかげで今やソニーは“狼少年”と陰口されている。平井社長のラスベガスでの発言も、まともに受け止められてはいません。第一、当の平井社長自身が『もう電機でのソニー復活は望めない』と腹をくくっているフシがある。そうでなければ不慣れな新規ビジネスに打って出ませんよ」(ソニー関係者)
医療やネット事業に邁進する以上、世間は二度と“技術のソニー”とは呼ばないだろう。