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米ヤフーを喰った進撃の“青い目ファンド” 次はソニーが捕食される!

 ソニーの経営陣は、海の向こうから飛び込んだ情報に身震いしたに違いない。同社株の約7%を保有し、米国のアクティビスト(物言う株主)として知られるヘッジファンドのサード・ポイントが、米ヤフーを舞台にマネー錬金術の荒業を発揮したのである。
 その詳細については後述するが、ともかくこの勢いに乗じて今度はソニー株を一気に買い増せばどうなるか。市場関係者は「平井一夫社長は、いまや蛇ににらまれた蛙の心境に違いない」というのだ。

 サード・ポイントのダニエル・ローブCEOは今年5月、ソニー株の6.3%を取得したとしてソニーの平井社長に面会、独自のソニー改革案を突きつけた。イワク「映画、音楽事業のエンターテインメント部門を分社化し、15〜20%の株式を米国で上場する。その上場で得た資金を不振のエレクトロニクス部門の再生に注ぎ込めばソニーの株価は大幅に上昇する」との論法である。
 これらは6月20日開催の株主総会には提案されなかったものの、総会直前にサード・ポイントはソニーの持ち株比率が約7%に高まったとアピール、これを受けて同社株が急騰したことがある。
 「同ファンドの運用マネーは世界全体で1兆3000億円とされるのに対し、ソニーへの投資額はまだ1400億円程度。本腰を入れて買いあさることを織り込んだ市場が『牽制球を投げた』と、はやした図式です」(前出・市場関係者)

 総会当日、平井社長は議案になかったサード・ポイントの提案について「エンターテインメントは成長戦略の実現に重要な事業。取締役会で時間をかけ、いろいろな角度から議論していく」と説明するにとどめた。サード・ポイントは提案に対する回答期限を設けないばかりか、平井社長の経営手法を批判しているわけでもない点がミソ。逆にいうと、ソニーの対応次第ではアクティビストの本性を現して「挑戦状を叩きつける」(同)ということ。平井社長とすれば、実に手ごわい存在なのである。
 そんな折も折、わずかの株式取得で米ヤフーを実質的に乗っ取ったサード・ポイントが、保有株の3分の2を会社側に買い戻させることで巨額の利益を得たことが明らかになった。そのマネー錬金術のアウトラインはこうだ。

 サード・ポイントは昨年秋、業績低迷で株価が冴えなかったヤフー株6000万株(5.5%)を取得、ダニエル・ローブCEOなど3人がヤフーの取締役に乗り込んだ。ローブCEOはヤフーの経営トップの学歴詐称を暴き、経営陣の入れ替えを行った。
 その上でグーグルから呼び寄せたマリッサ・メイヤー新CEOの下、ヤフーは業績が回復し、株価が急回復するタイミングを見計らったかのように、ローブCEOはヘッジファンドの顔をあらわにした。保有株6000万株のうち4000万株をヤフーに自社株買いさせることで、1165億円のキャッシュを得たのである。
 投資額を差し引くと、これだけで「650億円の利ざやを稼いだ計算になる」(アナリスト)という。そして、まだ手元に残る2000万株についても、ローブCEOを含めたサード・ポイント出身の役員3人が7月末で一斉に退任することから「遠からず売却する」(同)公算が強く、これらも時価にすれば約600億円。これが丸丸利益になるのだから、4000万株売却と合わせた利ざやはザッと1250億円に達する。だからこそ市場の関心は、米ヤフーの錬金術で得た巨額マネーの運用先に向けられているのだ。

 果たせるかな、インターネットの掲示板にはサード・ポイントの更なる買い増しを期待するソニーファンの書き込みさえ飛び交っている。繰り返せば、運用マネーは世界トータルで1兆3000億円。これに米ヤフー株の売却マネーが加わる。軍資金がタップリある以上、平井社長をはじめ、ソニー経営陣がローブCEOの繰り出す“次の手”に疑心暗鬼となるのも無理はないのだ。

 ソニーはサード・ポイントの提案に対し「取締役会で議論中」を理由に、まだ対応を明らかにしていない。しかし、ダラダラと時間稼ぎすれば相手に格好の口実を与えることになりかねず、かといって提案を真っ向から拒否すれば、猛然と牙を剥き、アクティビストの本性を発揮するのは目に見えている。現時点では「紳士的な対応に終始している」(ファンド関係者)以上、ソニー側が対応に苦慮しているのは明らかだ。
 「それこそが百戦錬磨のツワモノで鳴らしたサード・ポイントの作戦です。とりわけソニーにとって悩ましいのは生保、損保などの金融事業をいち早く東証に上場させたこと。これではエンターテインメント事業の上場は難しいと主張しようにも説得力に欠ける。サード・ポイントはそれを見越して提案したようです。ましてエレキ事業は慢性的な赤字垂れ流しにもかかわらず、ソニーは明確な再生シナリオを描けていない。だからこそ提案内容が説得力を持つわけで、これを一蹴したら青い目はメンツをつぶされたとして、かさにかかって攻め立てるに違いありません」(経済記者)

 米ヤフーでわずか5.5%の株主にすぎなかったサード・ポイントは、まんまと大枚を懐に収めることに成功した。ソニーウオッチャーはその点を踏まえ、「ソニー相手なら、赤子の手を捻るようなもの」と指摘する。
 「エンタメ事業の上場マネーをエレキ事業再生に注ぎ込むと思ったら大間違い。むしろ中国企業などに売却しかねず、ソニーの“生体解剖”が急加速します」

 進撃する“青い目ファンド”。その荒々しい息遣いが聞こえてきそうだ。

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