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球界因縁のライバル(14) 張本VS王(下)

 「これまでずっとONコンビでライバル意識を持ってやってきたのに、オレが監督になって、ワンちゃん1人になってしまった。相手のマークもきつくなるし、気持ち的にもどうしても刺激がなくなってくる。ワンちゃんを蘇らせるライバルは、張本しかいない。ONに代わるOH砲だ」。

 巨人監督就任1年目の75年、いきなり最下位になった長嶋監督は、チームの低迷と共に打率3割を切る2割8分5厘、13年連続獲得してホームランキングの座も阪神・田淵に奪われ、33本塁打と不振に終わった主砲・王を再生するために、日本ハムからトレードで張本氏を獲得した。「同期生のワンちゃんが最大のライバルだ」と明言していた張本氏を、長嶋監督が認め、最大限に活用しようとしたことになる。
 「巨人が優勝するためには、ワンちゃんを蘇らせる必要がある。そのためには、張本が絶対に欠かせない。務台さん(当時の読売新聞社社長)に2度も3度も土下座して、お願いしたよ」。長嶋監督の再三の要請でようやく実現したOH砲は狙い通りの効果を発揮した。
 チームは最下位からいきなりリーグ連覇。主砲・王も2年連続のホームラン王、打点王の二冠王。76年10月11日にベーブ・ルースを抜く715号、77年9月3日にはハンク・アーロンのメジャー記録を破る756号を記録している。アジアの張本が世界の王を見事にアシストしたのだ。「長嶋さんが父親でワンちゃんが長男、オレが次男坊みたいなものだよ」と張本氏は当時語っている。

 ONコンビからOH砲。4年間続いたが、「3000本安打はぜひ巨人で達成したい」という張本氏の願いは叶わなかった。長嶋監督解任、世界の王が現役引退した80年の1年前に張本氏はロッテに移籍、3000本安打を記録している。
 張本氏の役目だった最大のライバル、王氏を蘇らせたことでお役ご免というのが、巨人側のシナリオだったのだろう。なにしろ長嶋監督解任の後に、今度は王監督まで辞めさせている球団なのだから。その後、ダイエー・ホークス監督を引き受けた王監督は、松中、小久保というMK砲を育て、弱小チームを常勝軍団に変ぼうさせている。
 「常勝チームには、必ず最大のライバルコンビがいる。ONがそうだったし、ハリとのコンビもそうだった。赤ヘルには山本浩二と衣笠がいた。西武にも秋山、清原のコンビがいた」という、過去の経験を生かしたからだ。
 今でも「ワンちゃん」「ハリ」と呼び合う、ユニホームを脱いだ世界の王とアジアの張本は、背広姿になってからも、その関係、立場は変わらない。連覇したWBC侍ジャパンでは、コミッショナー特別顧問、日本代表監督相談役を務めた王氏は、外務省から委託され、野球特別大使という公職にも就いている。「野球を通して世界外交をしてほしい」という政府からのお願いを受諾したのだ。
 「メジャーリーグで一番知られているのが王さん」。駐米大使を6年半も務めた加藤良三コミッショナーが認める世界の王にふさわしい肩書きだろう。
 一方のアジアの張本氏は、韓国プロ野球のコミッショナー特別補佐官をするなど日韓野球界の架け橋になっており、韓国から勲章を授与されている。共に適材適所のポストに就き、日本球界のご意見番になっている。

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