「7月にハーグ(オランダ)の仲裁裁判所が下した南シナ海の領有権をめぐる裁定に対し、中国政府は『米国がデッチ上げた茶番』と激しく非難しました。今回の行動は、日本が判決を受け入れるよう繰り返し求めていることへの反発と考えられます」(全国紙記者)
中国の強引さはとどまることを知らない。尖閣はもとより、南シナ海の実効支配に関しては、日本のエネルギー危機に直結しかねない問題も浮上している。
「中国共産党機関紙・環球時報が今年4月、中国国内にある原発関連企業が仏アレバ社の技術をベースにした海上移動式の原子炉20基を建設する計画を進めていると報じました。これを受け、資料を分析した日本のエネルギー専門誌が先頃、来年には実証炉が建設され、東京オリンピックが開かれる2020年には実用化される可能性を指摘、そのまま南シナ海に配備される懸念を報じました。原発が海の上にあるということは、船舶によるエネルギー供給遮断のリスクが強まることになるというわけです」(通信社記者)
中国は南シナ海南部のパラセル諸島付近に大型機の離着陸が可能な滑走路を建設し、さらに人工島の埋め立てや陸上施設の建設を進めている。軍事基地はまだ確認されていないが、戦闘部隊が配置されれば数千人規模の要員が常駐することになり、原発の活用は彼らの生活のためにも欠かせない施設になり得る。
「現代紛争は設備に大量の電力を必要とするので、原発はダイレクトに基地の強化につながります。もう一つの利点は、もし軍事衝突が起こった場合、近くに海上原発があれば攻撃をためらわせる効果があることです。何より南シナ海は、中東の原油や液化天然ガスなど世界貿易の半数を超える貨物が通過する最重要輸送路。日本にとってこの海域の自由航行権を確保することは国益そのものと言えます」(軍事ジャーナリスト)
中国政府による“覇権主義”の追求が収まる可能性は限りなくゼロだ。海上原発の設置も、その強化の一環であろう。日本は先の参院選の結果を受け憲法改正論議が高まりつつあるが、“今そこにある危機”への対応が急務だ!