「中国当局は非公式ながら国内企業の一部に対し、北朝鮮労働者の雇用を停止するよう指示を出した模様です。北の出稼ぎ労働者は中国において、核・ミサイル開発に向けた外貨獲得手段の一つになっていました」(北朝鮮ウオッチャー)
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会が6月の初めに「4月の北の対中国石炭輸出量はゼロになった」と発表したが、金正恩朝鮮労働党委員長はまったくこたれていない。というのも、海外で働く北朝鮮の労働者は中国以外にも40カ国、10万人にも上ると言われ、年に約2億5000ドルをせっせと納めてくれるからだ。
「北朝鮮は在外大使館を通じてのビジネスが規制され、ドイツでは厳しい措置が取られましたが、規制の弱いキューバやロシア、イラン、さらにはパキスタン、バングラデシュ、ラオスに拠点を移しています。米国は高麗航空(北朝鮮の国営航空会社)利用のボイコットを呼び掛けましたが、依然として中国やロシアに飛んでおり、中国人の北朝鮮への観光旅行も衰えていません。また、肝心要の銀行取引の制裁については、北朝鮮は外国にあるダミー会社を使って制裁を回避しており、中国の仲介者を通じて受・送金を行っているのが実態なのです」(同)
このようにして得た外貨が北朝鮮経済を下支えしているとともに、巨額の資金を要する核・ミサイル開発に使用されていることは間違いない。加えて国内経済は、総合私設市場=闇市(チャンマダン)で蓄財した新興の“銭主”の登場により決して悪くはない。
「4月13日、金正恩委員長が“経済制裁など利いていない”とあざ笑うように『黎明通り』にそびえ立つ超高層マンション竣工式のテープカットを行いましたが、ここには銭主資本が投入されています。平壌市内などの新築高級マンションの3分の2は銭主と組んだ中国資本の所有と言われます」(在日中国人ジャーナリスト)
最初に“銭主”となったのは日本に親戚がいる帰国者だったが、その後、外国から合法的に物資を調達できる立場にあり、流通手段を手にしている貿易機関の幹部、許認可権を有する政府部門の幹部らが新たに加わった。
とはいえ、これら“資本主義者”の隆盛は正恩政権にとって両刃の剣だ。日本からも「遊戯関連企業」等から北へ資金が流れていることは周知のこと。各国に沢山の“北の働きアリ”がいる限り北朝鮮は資金に困ることはないということだ。