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ファミレス王者・すかいらーく 悲願の再上場に水を差す消費不況の足音

 ファミリーレストラン最大手のすかいらーくが東京証券取引所への再上場を検討していることが明らかになった。早ければ4月にも申請し、9月には上場の公算が大きい。

 同社は『デニーズ』『ロイヤルホスト』と並ぶファミレス御三家のトップ企業とあって、市場筋は早くも「時価総額4000億円超は確実」と熱いエールを送る。外食産業の上場会社では日本マクドナルドHDの時価総額約3350億円が首位だから、すかいらーくは市場評価額で一気に外食トップに躍り出る。

 すかいらーくは前回の東京五輪が開催される2年前の1962年設立。'70年にファミレス1号店を東京・府中に開業し、その後『ガスト』『バーミヤン』などの店舗を展開、日本の外食産業をけん引してきた。ところがバブル崩壊の影響と放漫経営、さらには低価格のファストフードに顧客を奪われて業績が悪化。2006年には創業家と野村プリンシパル・ファイナンスがMBO(経営陣による自社買収)を行い、東証1部上場を廃止して経営再建に取り組んできた。

 しかし、業績悪化のドロ沼から簡単には脱却できず、'08年には野村主導で創業者の一人だった横川竟社長を解任、生え抜きの谷真氏が後任の社長に就任した経緯がある。'09年10月、創業以来の店舗だった『すかいらーく』を全て『ガスト』に転換したことで、社名とは裏腹に同社の店舗から『すかいらーく』の名称が消滅した。
 「谷社長とタッグを組み、業績回復に手応えを得た野村は'11年10月、保有株を米投資ファンドのベインキャピタルに売却して撤退しました。ベイン主導となってからは、米マクドナルドで社長を務めたラルフ・アルバレス氏を会長に迎えた他、マーケティング担当や店舗業務など、重要なポストに米マック出身者などを次々とヘッドハンティングし、ガバナンス強化や事業改革を積極的に進めてきたのです」(関係者)

 結果、かつては赤字地獄にのた打ち回った同社が、いまや3期連続の黒字企業に変身している。
 「すかいらーくには以前から再上場観測がくすぶっていた。大枚1600億円を投じたベインだって投資ファンドである以上、どうすれば効率よく投資マネーが回収できるかを検討して当たり前。今年に入って市場が少々荒っぽくなってきたとはいえ、このタイミングを見逃すはずはありません」(大手証券マン)

 果たせるかな、市場には「主幹事は野村。ベインは保有株の3〜4割を売却して投資マネーを回収し、残りはしばらく保有する」とのシナリオが公然と囁かれている。何せ店舗数は3000店。日本最大を誇るファミレスの再上場である。関係者の鼻息は嫌でも荒くなる。

 ところが、これに水を差しかねないのが4月からの消費税引き上げだ。税率が5%から8%に上がれば家計を直撃する。結果、ファミレスでの外食回数を減らす家庭が急増すれば店舗の売上高は激減し、強力なボディーブローとなる。業績が回復したとはいえ、ピーク時に比べれば「まだ6割程度」(前出・関係者)の水準である。いくら不採算店を次々と閉鎖し、社内の意識改革を進めたところで“病み上がり”の企業にはズッシリ応える。
 「ロイヤルホストにせよデニーズにせよ、世間に向けて復活をアピールし始めたのは去年あたりからです。すかいらーくだって時期的にはそう変わらない。それでなくても日銀までが消費増税で4〜6月は景気が落ち込むと“太鼓判”を押している。これで景気が失速し、アベノミクスのメッキが剥げ落ちるようだとどうなるか。すかいらーくが経験した悪夢再現も十分あり得ます」(証券アナリスト)

 政府の甘い思惑通りに夏場から消費が回復したにせよ、来年10月にはもう一段階、消費税が10%に跳ね上がる。そうなれば多くの国民がどんな消費行動を起こすかは自ずと明らかだ。これを少しでも抑えるには消費税を上回る賃金引上げが効果的だが、圧倒的多数を占める中小企業のサラリーマンには望み薄である。
 「デフレ時代には、牛丼各社が280円を割り込むような価格設定で体力の消耗戦に明け暮れた。そのトバッチリを食ったのが客単価1000円前後のファミレスですが、アベノミクスの“気分”のおかげか、昨年はファミレスだけでなく、回転寿司や焼き肉屋にも客が戻ってきた。青い目ファンドがマネー錬金術の妙を満喫するタイミングは、今しかないというわけです」(同・アナリスト)

 すかいらーくは再上場時に新株を発行、市場から巨額の資金を調達する。果たして“王者の復活”は消費者の目にどう映るのか、いや、どう映ろうと財布に金が入っていなければ、店の前を素通りされるだけである。

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