なぜ日本の遺品はフィリピンに行くのだろう。中国は廃プラや古紙など資源ごみの最大輸入国だが、環境汚染や健康被害の深刻化で中国政府は昨年末、輸入を禁じた。受け皿を失った資源ごみは東南アジアに向かったが、タイ政府も今年6月、資源ごみの輸入禁止措置を取った。タイの業者が資源ごみと偽ってパチンコ台を偽装輸入したことがきっかけだった。
中国、タイから資源ごみ扱いとしてはじかれ、日本の業者は大きな痛手となるかと想定されたが、「フィリピンへのコンテナ本数を現在の4本から6本に増やす態勢をとる」(佐々木代表)と言い、フィリピンに焦点を合わせた輸出拡大に期待をにじませている。
「フィリピンはキリスト教国だから仏壇はダメ。あと暑いのでストーブ、こたつ、羽毛布団などは必要ないですね。その代わり、黒焦げの付いた鍋、フライパン、傷ついた食器、壊れたおもちゃ、何でも売れるんです」(佐々木代表)
焦げた鍋や壊れたおもちゃなどは地方の低所得者向けだが、日本製、あるいは日本人が使っていたという安心感から売れるのだという。他国からもフィリピンに輸出されているが、日本製ほど「人気がない」(佐々木代表)という。
「日本製は安心・安全で信頼性が高く、どんな物でも売れます。米国、中国、韓国からもフィリピンに送られているが信用がない。特に中国製は見た目はいいけれど粗悪品が多いので、フィリピン人は手を出しません」(荒津氏)
「日本製に人気が集まるのは高品質であるのはもちろん、偽物がない、中古品でも状態がよい、価格が安いことなどが理由ですね。日本でごみとして出せば廃棄物処理として費用がかかる物でも、輸出に回せば処理費用がかかからないだけでなく、利益さえ生み出すのです」(瀬川氏)
団塊の世代の“死亡適齢期”が目前に迫り、同時に高齢独居世帯も増加しており、孤独死はさらに増えていく。今後さらに、フィリピンがわが国のリユース資源の有力な輸出国になることは間違いない。