ところが業界内では「土壇場での白紙撤回もあり得る」との不吉な観測が浮上している。両社は7月30日、経営統合に向けて協議することで合意したとはいえ、昭シェルの特約店には「出光にのみ込まれ、我々の店舗が統廃合のターゲットになる」との警戒心が根強い。そこで昭シェルの統合反対派が親会社のロイヤル・ダッチ・シェルの保有する35%の自社株をソックリ取得し、統合を破談に追い込む。そんなシナリオが密かに囁かれているのだ。
出光は昭シェル株の33.3%相当分をロイヤル・ダッチ・シェルから1691億円で取得する契約を結んだと既に発表している。しかし、独禁法の審査に1年かかることから実際の株式取得は来年の上半期にずれ込む。この時間差を突けば“世紀の大逆転”が決して夢ではないところがミソ。昭シェルの統合反対派が親会社との交渉過程で株価が上昇に転じれば、出光との契約を反故にするとの“期待”もある。
「ロイヤル・ダッチ・シェルは液化天然ガスへのシフトを進めている。まして日本では、低燃費車の普及でガソリン市場が縮小に向かっている。これが撤退の決め手になったのは間違いない。彼らは損得計算だけで生きているも同然だけに、出光が裏切られたとしても不思議じゃない」(経済記者)
そんな背景を踏まえれば、旗揚げしたばかりの『統合準備室』に対する出光、昭シェルそれぞれの温度差が歴然とする。
「統合で基本的に合意しているとはいえ、具体的な形は何も決まっていません。ブランドをどうするかも含め、全て白紙です。今後、双方の準備室が詰めの作業に入る過程で、激しい応酬が予想されます」(石油担当の証券アナリスト)
波乱は避けられない。