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迫られる継続・撤退の選択 “24時間営業”を巡る飲食業界の苦悩

 日本人の働き方が問われ始めている。要は過重労働問題と、それに追い打ちをかける少子高齢化での人手不足だ。そのため、24時間営業を看板にするところが多かった飲食店業界にも、業態見直しの動きが拡大している。

 筆頭は、『ロイヤルホスト』や『マクドナルド』。ファミリーレストラン『ロイヤルホスト』223店舗を運営するロイヤルHDは、大半の店舗で行っていた24時間営業店舗を2017年前半で、すべて廃止するという。
 狙いを尋ねると、同社の広報担当者は文書で概ねこう回答した。
 「'11年、各地域ごとに分社化していた組織を一つにして、ロイヤルホスト(株)となりました。この時、今後の方向性を検討し“豊かな食の時間”をブランドコンセプトの一つとしました。主に、お客様がランチタイムやディナータイムといったお食事をされる時間帯に、安定したサービスと商品を提供していくことと、また従業員の働く環境をよくしていく取り組みを進めること。その一環で営業時間の短縮を行いました。効果は営業時間に店舗責任者がピーク時に在店することになり、お客様へのサービスや料理の品質が安定。従業員も安全安心に働け、従業員間のコミュニケーションの向上も図られ、責任者の精神的負担の改善にもつながりました」

 同様に、すかいらーくグループも見直しの動きだ。24時間営業を行う国内428店舗のうちの310店で4月を目途に24時間営業をやめ、さらに深夜2時以降営業していた559店舗の8割も、原則深夜2時閉店に変更する。
 経営コンサルタントの1人は、こうした大手ファミリーレストランの動きをこう分析する。
 「社会の風潮に照らし、従業員の職場環境改善の圧力増加、深夜の時給アップ、人手不足、深夜客の減少と四拍子が揃ったことで、24時間営業を止めたほうが得策と判断する経営者が増えつつあるということです」

 24時間営業見直しは大手ファミリーレストランに留まらない。
 低価格路線と24時間営業店舗の拡大で業績を伸ばした日本マクドナルドも、すでに営業時間短縮に舵を切っている。

 そんな中、いまだ24時間店現状維持派もある。
 ゼンショーHDが運営する牛丼チェーン『すき家』では、全国で4万人超のパート・アルバイトが働いているが人材を確保できず、1964店舗中、24時間を再開できない店舗は約130店舗あるという。それでも、テナントの都合で24時間対応をできない店舗を省いても、1730店舗が24時間営業を死守している。
 「人件費も高騰する中、人材確保は大変です。しかし、ほかの飲食店はいざ知らず、我々は日本の食のインフラを支えているという自負があります。24時間対応できずに灯りが消えたときは、多くのお客様から『早く再開して欲しい』という強い要望もありました。そのため現状では、基本的に24時間営業を変えるつもりはありません」(関係者)

 対し、同じ牛丼チェーンの『吉野家』も現状派か。
 広報担当者の話。
 「最新数値で国内は1207店舗。うち、時間限定が581店舗、24時間営業が626店舗です。24時間店が増減しているかは不明です」
 『吉野家』の場合は客需要が減少し、深夜営業を取りやめる店舗もあるなど、時代の流れで形態は臨機応変に変わるという。成田空港店ではLCCの利用者が多く、深夜早朝時間帯の客が増えているため、昨年24時間店舗として新規オープンさせている。

 このように見直し機運が高まる中、24時間で急成長する飲食企業もある。
 「居酒屋チェーン店には、24時間営業の店がたくさんあります。従業員の確保には苦労しているが、負担にならない工夫をこらしている。また、昼食に居酒屋の利益をカバーするほどの人気メニューを作ったり、午後から夕方の時間帯はシルバー世代が“ちょい飲み”をしやすい価格帯にもしている。24時間を有効に使い分け、売り上げを伸ばしている企業も多い」(飲食業界専門誌記者)

 立ち食い蕎麦業界でも、東京都内を中心に116店舗を展開する『名代富士そば』(ダイタングループ)は、24時間営業を押し進める。
 「一方で、24時間営業+さらなる味で勝負をかける新興勢力も生まれています。ライトスタッフが運営する立ち食いそば・天丼店『いわもとQ』は、都内新宿歌舞伎町や池袋など繁華街を中心に展開。まだ4店舗ですが、客の評判は上々。蕎麦は店が混んでも一度に4食分ずつしか茹でず、天ぷらも注文を受けてから揚げるなどを徹底し、価格もワンコインを中心にリーズナブルですからね」(フードライター)

 それぞれの舵取りは、今後、吉と出るか凶と出るか。

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