JR西日本は、小浜から京都を経由し、東海道新幹線に乗り入れ新大阪に至るルートを提示した。また、西田議員は小浜から舞鶴を経由し、京都経由で南下し、関西国際空港にまで接続するルートを提案している。
新幹線の整備のプロセスについて、あらためて整理しよう。
新幹線の整備は、
ステップ1:基本計画
ステップ2:整備計画
ステップ3:事業化
と、三つのプロセスをたどる。実際に線路整備の「工事」が行われている段階が事業化の段階だ。整備計画が決定されている北陸新幹線の新大阪までの延伸は、ルートが決まらないために事業化は始まっていない。
左ページの図(※本誌参照)の通り、わが国では、
○北海道新幹線の旭川までの延伸
○新青森から秋田、新潟を抜け、北陸新幹線に接続される羽越新幹線
○大阪から鳥取、松江を抜け、下関に至る山陰新幹線
○大阪から大分まで結び、高知まで延ばす四国新幹線(及び四国横断新幹線)
○松江から岡山まで中国地方を横断する中国横断新幹線
○九州の東海岸を走る東九州新幹線
○大分から熊本までつなぐ九州横断新幹線
などの「基本計画」は決定されているのである。とはいえ、基本計画はあくまで単なる「計画」だ。基本計画を整備計画に落とし込まなければ、事業化のプロセスには進まない。
先述の通り、北陸新幹線の新大阪延伸は整備計画の段階にある。九州新幹線の長崎ルートは、整備計画は決定され、すでに一部が建設中だ。また、北海道新幹線の新青森-新函館北斗間は、今年の3月26日に開業予定となっている(札幌までの延伸は2031年の予定)。
北陸新幹線の敦賀-新大阪間のルート選定に際しては、自治体の利害が絡み、調整が難航するのではないかと考えられている。というわけで、各自治体も納得するであろう新幹線整備の手法を提案したい。
「自治体の利害」といえば、最ももめそうなのが「舞鶴市」関連である。湖西ルートや米原ルートの実現性が下がっているため、敦賀延伸で小浜市を通過するのは、ほぼ確実だ。同時に、経済合理性の点から見ても、京都を経由しないわけにはいかない。
そうなると、最も重要な争点は、京都までのルートが「小浜-京都」になるのか、「小浜-舞鶴-京都」になるかに絞られる。5月の候補絞り込みまで、舞鶴を経由するか否かが最も激しく議論されることになるだろう。つまり「難航」するわけだ。
あらためて考えると、要は新幹線整備の話について整備計画が決定されている北陸新幹線の敦賀-新大阪延伸に限っているため、もめるのだ。ならば、北陸新幹線のルートを小浜-京都-新大阪とすると同時に、小浜-舞鶴経由の山陰新幹線も整備計画に落とし込むべきだ。
さらに、北陸新幹線を関空まで延ばすのはもちろんのこと、同時に和歌山市に向けて南下し、淡路島経由で四国、大分までつながる四国新幹線も整備計画化するのだ。
もともと、四国新幹線は明石海峡大橋経由で四国につながる「基本計画」が策定されているが、整備計画段階において関空経由に変更する必要があると考える。四国新幹線の基本計画が決定された1973年時点では、関西国際空港は存在しなかった(関空の開港は1994年)。
上記、二つの新幹線基本計画を整備計画に落とし込むことで、大分から四国を経由し淡路島、関空、新大阪、京都から米原、もしくは小浜・敦賀に向かうルート、さらには鹿児島中央から熊本、福岡、下関を経由し、そのまま山陰側を出雲・松江、鳥取、舞鶴と通り、小浜に達し、京都もしくは敦賀へと向かうルートも実現に向かい、歩みを始めることになる。
いかがだろうか。夢が広がらないか。
これ以外にも、西日本に新幹線「ネットワーク」を構築するためには、中国横断新幹線や東九州新幹線、九州横断新幹線の整備が必要だが、とりあえず北陸新幹線の延伸の際に、「新大阪から関空を抜け、四国に渡り、大分に至る四国新幹線」と「小浜から舞鶴を通り、鳥取、出雲・松江経由で下関に至る山陰新幹線」の二つを整備計画化するのである。これで、舞鶴などの地方自治体との調整も「難航」はなくなるだろう。
無論、筆者は土木工学やインフラ技術の素人である。これは筆者の「夢」にすぎない。とはいえ、偉そうなことを言わせてもらえるならば、人類の進化とはこの手の「夢」が提示され、夢を共有した大勢の人々が動き出し、研究開発や建設投資等にリソースが投じられることで実現してきたのだ。昨今のわが国の政治家の最大の問題は、この種の「夢」を国民に抱かせる情熱を失ってしまったことではないだろうか。
参議院選挙も近いことであるし、北陸新幹線延伸の議論において、是非とも国会議員の皆様には大いに「夢」を議論してほしいと切に願っているのである。日本、今こそ新幹線の第2次整備計画を決定するタイミングなのだ。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。