「これは数字のマジックです。今シーズンのシラスの漁獲量は、漁期半ばの1月中旬までで9トン程度と推定され、極度な不漁続きだったここ数年の中では多い方です。とはいえ、漁獲量が底を打った年度を基準にしていますから喜んでばかりもいられない。1975年には80トン近くもシラスが獲れたのですから、豊漁とは程遠いのが現状です」(水産ジャーナリスト)
シラス資源が枯渇した状態を基準に、少しでも水揚げが上向けば『豊漁』と報じるのは日本の悪いクセだとも言う。ところが漁業先進国として名高いノルウェーでは「親のカタキとサカナは、見たら逃すな」という日本の漁業とはまるで違い決して乱獲はしない。
「ノルウェーでは日本とは逆に、資源が豊富な時代を基準にして漁業の状態を判断しています。同国は、乱獲によって資源の枯渇がはっきりしたニシンとシシャモの漁獲量を、約10年に及ぶ禁漁で回復させています」(同)
魚群探知機を使って根こそぎとってしまう現在のハイテク漁業は、海洋生態系に甚大なインパクトを与えている。
「サカナがどれほど減っても規制をせずに、目先の漁獲量の増減に一喜一憂しているのが日本の現状。ウナギ食文化を守りたいなら、産卵できる親魚が確保できるまで厳しい漁獲規制を行うべきです」(同)
サカナは湧いてくるという感覚の日本人こそ、世界では絶滅危惧種だということを知るべきなのである。