マードック会長は今年6月に『20世紀フォックス』を『21世紀フォックス』に改称。同時に、同社と一体化していた出版・新聞事業の『ニューズ・コーポレーション』を切り離す方針である。そのアジア地域での準備、打ち合わせが訪日の理由としている。
ただ、マードック会長が成田でプライベートジェット機を降りて最初に会いに行くのは、支社の幹部社員ではなく孫正義ソフトバンク社長だ。
「'96年、2人はタッグを組んでテレ朝の買収を仕掛けた。大株主である旺文社メディアを417億円で買収、当時の筆頭株主である朝日新聞を驚かせた。そこで朝日新聞は買収価格以上の料金で買い戻した。一説には450億円とも、それ以上ともいわれています。その儲けを山分けしたマードックと孫はそれ以来、かたい絆で結ばれている」(某テレビ局社員)
実は、マードック・孫両氏の動きをぴったりマークしている部署がある。それはテレ朝のみならず、キー局の表に出ない裏情報収集スタッフである。
「各局の総務局や経営企画室などに、重要な情報収集をおこなう隠れキーマンが2〜3名いる。時にはホステスを利用するハニートラップ戦略まで手を染め、極秘の一級情報を集めている」(放送業界紙記者)
では、マードック会長のひんぱんな訪日をどう分析しているのか。
「マイスペースなど、SNS関連の会社は既にある。狙いはやはりキー局の買収でしょう。ターゲットは、ずばりフジ・メディア・ホールディングス。認定放送持ち株会社のため、買収はできないことになっているが、必ず抜け穴はあるというのが2人の発想です。'13年3月期におけるフジ・メディア・ホールディングスの売り上げは6288億円。その中でフジテレビはその半分程度の3235億円しかなく、フジ・メディア・ホールディングスはもはや純然たる放送局ではなくなってきている。サプライズで買収はあるかもしれません」(放送関係者)
82歳になったマードック会長とキー局情報収集スタッフの“神経戦”はこれからが本番である。