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契約・正社員必読! 「ブラック企業」完全告発マニュアル(2)

 なぜこのような“ユルイ”検査を行っているのか−−。それは、労基署が違反企業を摘発するために存在する組織ではなく、労働基準法等の関係法令を円滑に運用するために存在する組織だからである。
 「厚生労働省にブラック企業という概念はなく、法令遵守企業かそうでないか」(厚労省職員)という視点であるため、経営者からすれば、おとなしく立ち入り検査を受け入れ、万が一違反行為が発覚したとしても、素直に指導に従い是正すれば、社名を公表されることも送検されることもないのである。労基署は労働者の味方ではないのだ。

 こういった労基署の立ち位置を知らずに労働者が労基署にタレ込んだとしても、社内で犯人捜しが始まるだけで何も変わらない公算が強い。その上、タレ込んだ犯人であるとされた場合、退職を余儀なくされる可能性すらある。
 必要なものはとにかく証拠である。労働契約書、タイムカード、給与明細、給与振込先金融機関の通帳、社内通達、就業規則、給与規定など、勤め先の関係書類は一式用意すべき。さらにはメールや日記、メモといった業務に関係する記録も用意しておいた方が無難である。それを最寄りの労基署に持って行く。

 そして、何より会社側に気付かれてはならない。前述の通り、労基署は立ち入り検査に入った時点で違反行為が是正されていれば、企業名の公表、まして送検などすることはあり得ないからだ。
 「とにかく根本的な労働条件改善を目指しているのであれば、労基署の立ち入り検査が入った時点で違反行為が続いていることを確認させ、再発防止策の策定など、きっちり労基署の監視下に置くことが必要です。一度、違反が認定されれば、『再監督』という制度があるので、そこへの立ち入り検査は入りやすくなる。経営者としては気が抜けない状況となるのです」(労働問題に詳しいライター)

 ただし、労働基準監督官には年間の「定期監督」立ち入り検査の目標件数があるため、すぐには動いてもらえない可能性がある。そうした場合は、労基署の上部組織である各都道府県の労働基準局に直接訴えるという手もある。そこからの指示であれば、おそらくすぐ動く。公務員組織とはそういうものだ。

 また、公務員組織だからこそタレ込む先を間違えてはいけない。労働時間の長時間化による過重労働や、給与未払い・残業代未払いをタレ込む先は労基署で間違いないが、同じ厚労省内でも「セクハラ」や「マタハラ」の管轄は雇用均等・児童家庭局、「高齢者」や「障害者」の絡む就業問題は職業安定局。あくまでも“お役所仕事”であり、当然のように労働基準局との交流は少ない。加えて言えば、「暴力を伴うパワハラ」は警察の範疇であり、「人権侵害のようなパワハラ」は弁護士の出番となってくる。
 「立ち入り検査時には、セクハラやパワハラの存在を確認することはありません。あくまで労働契約、労働時間といった部分のみです。“たまたま目撃”でもしない限り、他の機関と連携して取り締まることはありません」(労働局職員)

 各管轄の立ち位置を知り、タレコミにより労基署が動かざるを得ない状況を作り、摘発させる。救われる方法は、これ以外にない。

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