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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 仮想通貨はつぶされたのか

 仮想通貨、ビットコインの世界最大の取引所であるマウントゴックスが、2月28日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、経営破たんした。

 同社は昨年5月頃から数回にわたってサーバに攻撃を受け、今年2月からはビットコインの引き出しができなくなる事態に陥っていた。そして2月24日頃までにユーザーが保有する75万ビットコインと会社自身が保有する10万ビットコインのほぼ全て(日本円で114億円相当)が消失したという。また、同社が取引のために顧客から預かり、インターネット経由で銀行に預けていた28億円の預金も消失していた。
 同社は、ハッキングによって盗まれたとしか考えられないと表明しているが、セキュリティーレベルの高いネット預金も消失していることから、もしハッキングされたのだとしたら、ケタ違いに高い技術を持った者が犯人ということになる。

 そこで疑われているのが、米国の金融当局だ。ビットコインは、どの国の支配も受けない通貨として、現実の通貨を脅かす可能性がみえるほど急成長してきた。誰も管理していないから、アウトローの資金も盛んに利用しているといわれる。麻薬や覚醒剤、さらには投機資金のマネーロンダリングなどのために積極活用されてきたのだ。だから、ビットコインは、ケイマン諸島やバミューダ諸島など、タックスヘイブンと呼ばれる旧英国植民地で広く普及していた。
 この状況が面白くないのは、明らかに米国だ。米国はドルの力で世界経済を牛耳ってきたと言っても過言ではない。どんなに経済的に追い詰められようと、ドルを刷れば世界中が喜んで受け取ってくれたからだ。
 いま世界の投機資金は、アメリカ系列とイギリス系列の二手に分かれてしのぎを削っている。だから、主軸をイギリス側に置いているビットコインにアメリカが先制攻撃を仕掛けたとみても何も不思議はないし、私は説得力のある見方だと思っている。

 もちろん、今回の事件はビットコイン関係者の内部犯行という可能性もあるから、犯人が誰かを特定することは、現時点ではできない。ただ、今回の事件は、図らずも仮想通貨の脆弱性を露呈させてしまった。
 いまは兌換制度ではないので、中央銀行に紙幣を持っていっても、金と交換してもらえるわけではない。しかし、中央銀行は何か資産を購入する形で、代金として紙幣を発行している。例えば国債を購入して、その代金として紙幣を発行するのだ。だから、管理通貨制度の下でも、紙幣には必ず資産の裏付けがある。
 ところが、ビットコインにはその裏付けがない。例えば、難しい計算問題が出されて、それを最初に解いた者に新規のビットコインが発行されるという形が採られているのだ。だったら、きちんと資産の裏付けを持ってコインを発行すれば良いと思われるかもしれないが、そうすると中央銀行と同じことをやることになって法律に触れてしまうのだ。

 いまの法律では、ビットコインは商店街の福引きで配られる金券のような扱いなのだ。だから、それを資産運用や決済の手段として使われること自体が、まずかったのだと思う。何か問題が起きても政府が守ってはくれないからだ。

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