今年は11人の捕手がドラフト指名され、育成枠でも3人が選ばれた。14人の捕手が同時にプロ入りする年は珍しい。また、育成選手を含めてだが、捕手を指名しなかった球団は広島だけとなった。
しかし、ドラフト会議とは、当日直前にその追い掛けてきた選手の評価を一変させることもある。候補選手に“理由”がある場合も見られるが、後に予定しているFA、トレード、外国人選手の補強などで指名リストが書き換えられる。そういった直前変更のドラマは“捕手豊作”の今年も見られた。
「高校球界トップと称された森(友哉)クンの1位入札が西武だけというのは、ちょっと意外でした。身長が低いとか、プロのスピードに対抗できるのかなど、マイナスの声も聞かれましたが、それは全て『機会の裏返し』でした。強打の捕手は稀少ですからね」(在京球団職員)
今年のドラフト会議に、将来の正捕手候補を求めていた球団は少なくない。「まさか、下位指名になるとは!?」と、取材陣を驚かせた捕手がもう1人いる。福岡大・梅野隆太郎である。
梅野は遠投120メートルの強肩で、年齢は違うが、森と評価を二分していた。日米大学野球でも日本代表チームの主将を務めており、「ある球団は松井(裕樹=18/桐光学園)の競合で外れた場合の『1位リスト』に入っている」(球界関係者)との事前情報も聞かれていた。
ドラフト会場の裏話をすると、その梅野が4位で阪神に指名されたとき、「この順位でよく残っていたものだ…」と首を傾げる報道陣も多かった。この梅野指名の前に、すでに7人の捕手が指名されていた。4位という下位指名について、梅野本人も共同記者会見で「(自分よりも先に指名された選手のなかには)自分の知らない捕手もいた」とこぼしており、かなりのショックを受けていたようだった。
「前評判の高かった森、梅野の両捕手はドラフト直前で評価を落としましたね」(前出・関係者)
各方面に両捕手の評価を改めて伺ってみたが、「慎重になりすぎた」というのが真相らしい。ザックリとだが、両捕手に共通している点が2つある。1つは小柄だということ。森は170センチ、梅野は173センチ。ホームベース上で外国人選手が肘を出して突入してくる昨今、肉体的に太刀打ちできないのではないかと思ったらしい。
「主力捕手がFA権を行使するとの情報が、ドラフト前から流れていました。そのFA権を持つ捕手を獲得するのを前提に、ドラフトでは投手を1人でも多く獲ろうと戦略を変更したようです」(前出・同)
1つの情報がドラフト候補の順位を変えることもあるようだ。(一部継承略)