「総理大臣杯はたいてい首相代理で官房副長官が手渡すもの。しかし、今場所は引退のかかった朝青龍優勝なるかに注目が集まり、異常に盛り上がった。麻生首相の発案か周囲の入れ知恵かわからないが、2001年夏場所千秋楽でけがをかばいながら優勝した横綱貴乃花を『感動したっ!』と絶叫調で褒め称えた小泉元首相を意識したのは間違いない。結果的には読み間違えで“2匹目のドジョウ”とはならず、好感度アップを狙ったパフォーマンスは大失敗だった」(全国紙政治部記者)
大相撲観戦は品格が重んじられるうえ、高齢者が多く、それほど辛らつなヤジは飛ばない。まして朝青龍の復活優勝で、国技館の空気は十分すぎるほど“温まって”いた。ところが、麻生首相が笑顔で手を振って登場するや「ブ〜!」の声。「景気対策をしっかりやれ」などと容赦ない批判が浴びせられた。朝青龍への大歓声にかき消されてしまったものの、プロレス会場なら一斉ブーイングになるところだった。
これに動揺したのか麻生首相は「内閣総理大臣、朝青龍明徳殿」とまさかの大チョンボ。朝青龍に“総理はアンタだろ”と突っ込まれてもおかしくないボケっぷりだ。
首相はミスに全く気付かない様子で、「数々の試練を乗り越えての優勝。やっぱり横綱は強くなくっちゃ」とスマイル。大歓声のなか、重さ約40キロの総理大臣杯トロフィーを持ち上げようとしてよろめき、会場から「あ〜あ〜」と“だから言わんこっちゃない”といったタメ息が漏れた。
一方、この日投開票された山形県知事選では、民主党などが支援する無所属新人で行政書士の吉村美栄子氏(57)が、自民党の大半が応援した無所属現職の斎藤弘氏(51)を接戦の末に破って初当選。自民党が厚い支持基盤を持つ山形県で事実上の「与野党対決」を民主支援候補が制したことは、支持率低迷が続く麻生首相の政権運営に影響を与えるのは必至の情勢だ。麻生首相の大相撲パフォーマンス不発も相まって、今後の政権運営は一層難しくなりそうだ。