いよいよ2カ月半後の期限を見据え、各金融機関は今、顧客中小企業の選別に取りかかっている。同法終了後も支援するかしないか、すなわち再度の返済猶予に応じるかどうかだが、支援しないに分類された企業の倒産が相次いでいる。民間の信用調査会社帝国データバンクによると「金融円滑化法を利用したにもかかわらず倒産した企業が、'12年10月は51件発生し、'09年12月の集計開始以来、過去最多を記録した」という。
この倒産増加の背景に、“食えない”弁護士の姿が見え隠れする。債務整理に代わって金融円滑化法に目を付けたのだ。
「弁護士が中小企業側に立ち、金融機関に金融円滑化法に基づく返済条件の変更を要請してくる。終了までわずかということで、駆け込み的にやってくる中小企業の弁護士が多い」と、地方銀行幹部は言う。
問題は、返済条件を変更することは、当該企業が当該の条件緩和債権を全額返済しない限り、新規融資を極めて受けづらい状況になるということを、中小企業側が理解していないケースがあるということだ。
金融機関側は「今、条件変更をすると将来的に融資できなくなる」と説明するが、拒絶してしまうとそれは金融庁への報告事項となっており、その金融機関には「相談に来た企業を追い返した」というレッテルが貼られてしまうので、金融機関側としても避けたい。弁護士の書面まで持ってきた企業については、返済を猶予せざるを得ないというのが実情なのである。
とある金融機関によると「持ち込まれた返済猶予要請のうち半数程度が必要性に疑問を感じるもの」とのこと。300万件を超えるという途方もない返済条件の変更件数の背景には、弁護士が“けしかけている”という裏事情があったのである。
「金融円滑化法を利用すれば返済条件を変更できる」という弁護士の口車に乗った企業は、一時的に資金繰りが楽になるかもしれないが、その後、業況が悪化し再び資金繰りが厳しくなった際に、支援が得られず倒産する可能性が高まる。
弁護士としては、当該企業が倒産してしまっても構わない。金融機関との交渉代理という仕事がなくなったとしても、次は「自己破産の申請代理人」や「破産管財人」として仕事にありつけるというわけだ。
さすが、難関国家試験を突破した弁護士とでもいうべきか…。けしかけられた中小企業は、被害者としか言いようがないのである。