そんな声がマスコミ関係者の間から聞かれる。安倍総理は次々に“お友達”をトップに送り込み、報道などに介入する可能性が出てきたからだ。
その前兆は'07年6月、第一次安倍内閣のときのNHK経営委員長人事にみられた。
新経営委員長に選ばれたのは、富士フイルムホールディングス社長の古森重隆氏。経営委員長はNHKの経営委員から互選されるが、一般紙はすでに経営委員長が決まる前から「古森氏決定」と報道していた。安倍側のリークだが、これに首を傾げる政・財界関係者は少なくなかった。
なぜこうなったのか。それは安倍総理の取り巻きに理由があった。古森氏はJR東海・葛西敬之会長らとともに、安倍氏を囲む『四季の会』の主力メンバーだったのだ。
他にも安倍氏には『さくら会』がある。同会は今年に入ってすでに3回、会合が開かれた。
「三菱重工業など三菱グループ主要企業の経営者の他、日立製作所の中西宏明社長、東電の取締役で、前NHK経営委員長の数土文夫氏ら豪華なメンバーが名前を連ねている」(財界事情通)
いまのNHKを牛耳っているのはJR東海人脈。松本正之会長('11年1月就任。任期は3年のため'14年1月で任期切れ)は元JR東海社長・副会長を歴任してきた。JR東海・葛西会長の側近である。その松本会長もきわめてきな臭い人事を行っている。
「'04年5月に松本氏がJR東海社長になったとき、副社長をつとめた盟友の石塚正孝氏をNHKに連れてきた。肩書きは『特別主幹』で松本会長をサポートするのが目的。ただ実際は“裏広報”的な役割を担っていたようです」(財界関係者)
昨年辺りまでのNHKはトヨタが食い込んでいたが、パワーバランスが変わってきた。'06年に入局し、今年4月に退任した専務理事放送総局長の金田新氏はトヨタ(専務)から送りこまれた。
しかし、次期会長の有力候補だった金田氏は権力闘争に敗れる。そして、いまやJR東海出身者が権力を持ち始めているのだ。
そんな折、葛西会長と懇意である安倍復権となれば、NHKを牛耳ることは赤子の手をひねるようなものだ。それほど今のNHKは、免疫力が低下している。
痴漢や大麻所持、インサイダー等、そのぬるま湯的体質はあまりにもひどいといえる。そして報道も弱くなっている。現場の記者から報道局長あたりまで、上を見ながら取材し、原稿を書いている。すっかりサラリーマン体質になってしまった。
「組織が脆弱化しているときに安倍超タカ派内閣が支配すれば、NHKは安倍個人や内閣の悪口や批判ができなくなる」(テレビ業界事情通)
今後、NHKの報道は期待できない可能性がある。いまや信頼できるのは、ツイッターなどの個人発メディアだけ?