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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 なぜ民意が反映されない

 11月16日に衆議院が解散され、総選挙に向けての動きが一気に活発化した。少数政党が乱立する中、毎日新聞が11月17、18日に行った世論調査によると、衆院比例代表の投票先は、自民17%、維新13%、民主12%となった。維新に合流した太陽の分4%を加えると、維新支持は17%となり、自民と維新の一騎打ちの構図となっている。
 しかし、今回の選挙の最大の問題は、民意が投票先に結びついていないことだ。消費税増税に賛成している自民、公明、民主、国民、維新、太陽の6党を投票先とした人は50%、増税に反対している生活、共産、みんな、社民、減税、大地、みどり、新党日本の8党を投票先とした人は9%にすぎない。これまでの世論調査で、国論を二分してきた消費税引き上げは、選挙では、圧倒的支持で追認されることになるのだ。
 このことには、橋下徹大阪市長の影響が大きい。一度は太陽の党との合流で合意した減税日本を強引に引きはがしたうえで、維新と太陽の合流を選んだ。維新は、消費税を地方税化することを条件に11%という政府よりも高い税率を打ち出している。橋下氏の増税への強い意欲が選挙の流れを変えたのだ。

 一方、民意とのもっとも大きなズレは、脱原発だ。自民党は、安倍総裁が「2030年代までに脱原発といった無責任な発言をしない」と原発再稼働への姿勢を鮮明にしている。
 維新は、もともと「2030年代までに脱原発」としていたが、太陽との合流にあたって「厳格な安全基準を作り、基準を満たすものだけを再稼働する」と立場を大幅に変えた。維新の新しい代表となった石原慎太郎氏の意向を受け入れたからだ。
 今回の選挙が、自民と維新の一騎打ちになるとすれば、原発再稼働はこれで確実になったと言えよう。これまでの世論調査では、脱原発には国民の8割が賛成している。つまり、原発再稼働は選挙に不利に働くのに、なぜ橋下氏は石原氏に追随したのか。

 石原氏が原発再稼働にこだわるのは、経済的な理由だけではない。
 日本が世界に対して強い発言力を確保するためには、核武装することが必要だというのが石原氏の持論だからだ。現実問題として核武装が不可能でも、少なくともやる気になればいつでも核兵器を製造できる状態にしておくことが抑止力につながると考えている。そのためには、プルトニウムを生成し続ける原発を稼働させておかなければならないのだ。
 橋下氏は、もちろんそのことを知っている。実は、橋下氏は大阪府知事になる以前は、日本は核武装をすべきという意見だった。しかし政治家になってから、それを封印しているだけなのだ。
 国民の大部分は、日本が核武装をしてよいとは考えていない。しかし、選挙の結果次第では、石原氏が総理大臣になって、“核武装にひた走る”という可能性も否定できなくなってしまった。

 なぜ、こんなことになってしまったのか。私は一番の原因は、小選挙区制だと思っている。小選挙区制の下では、大きな組織にいないと当選が覚束ない。そのため、リーダーが必要以上に強い権力を持ってしまうことになる。まず、その構造を直さないと、民意がストレートに政治に反映しないのだ。

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