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追跡1年 尼崎連続変死事件 ヤクザとシャブ、そして「家族喰い」 ノンフィクションライター・小野一光(2)

 その若い衆の筆頭格であり、“美代子元被告の暴力装置”と称されているのが、マサこと李正則被告(39)だ。彼は'04年に美代子の伯父である前出・寅雄と養子縁組し、義理ではあるが美代子と姻戚関係にある。
 マサもまた、20代の頃に一時的にではあるが、地元の暴力団に籍を置いていたという。彼は現在、3件の殺人と1件の傷害致死などの罪で起訴されている。
 〈「マサも角田のオバハンに預けられたとき、最初の三カ月くらいは監禁されたみたいや。ほんでな、オバハンやオバハンの弟にさんざん脅されたらしいで。暴力団と右翼の名前を出されて、『逃げたらどうなるかわかってるやろな』て。それからマサはビビッてもうて、オバハンには逆らえんようになってもうたんや」〉

 ここに出てくる美代子元被告の弟とは、月岡靖憲受刑者(60)のこと。月岡というのは美代子の父方の苗字で、同受刑者は、以前は右翼団体に所属していたとの一部情報がある。'07年に弁護士に対する恐喝容疑などで逮捕され、懲役14年の実刑判決を受けて、現在は服役中である。
 ちなみに彼は、'80年代に日本中を震撼させた“グリコ森永事件”の重要参考人として、当局から聴取を受けたという過去を持つ。
 このように、美代子元被告の周囲に裏社会とのつながりを持つ者が数多くいることが、拙著『家族喰い-尼崎連続変死事件の真相-』には書かれている。

 また、同書によって初めて明らかにされたのが、美代子元被告の覚せい剤使用についてである。
 〈「当たり前やんか。そないせんでどうしていつも朝まで元気なんや? 考えてみい、一緒につるんどったリツ子(仮名)は、過去になんで捕まったんや?」〉

 リツ子とは、マサの実の母親のことだ。彼女もまた、美代子とは30年来の知人だった。
 実は本書を書き上げた後で、美代子元被告が覚せい剤を入手していたルートについても情報が入っている。たとえば、マサの後輩に覚せい剤の売人がいて、そこから入手していたというもの。またあるときは、美代子元被告の内縁の夫である鄭頼太郎被告(63)とマサの2人で、大阪の西成に買いに行ったこともあったという。
 入手した覚せい剤を、美代子元被告は腕ではなく内股に注射していた。それについても目撃者がいる。そうして自身の眠気を吹き飛ばしたうえで、乗っ取った家族に対して、連夜の“家族会議”を強要していたのだ。

 美代子元被告を中心とした“角田ファミリー”の被害に遭った、死者・行方不明者は10人を超えている。
 その大半が、実際にはさして強固ではなかった美代子元被告と裏社会とのつながりに怯え、彼女の言いなりになるしかなかった親族によって殺害された。
 再び同じことが繰り返されないためにも、その犯行について拙著で知ってもらいたい。

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