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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 野田総理の民主党つぶし

 野田総理が、TPPへの参加を選挙公約に盛り込む方針を明らかにした。11月10日に視察のため訪れた福岡市内で、「政府・与党の考えは、TPPを追求する姿勢だ」と記者団に明らかにしたのだ。これは、総理の暴走といってよい。
 民主党の経済連携プロジェクトチームは、9月7日にTPPへの交渉参加の是非について「慎重に判断することを求める」とした報告書を古川元久国家戦略担当相に提出しており、これが民主党としての最終判断という扱いになっているからだ。

 そもそもTPPへの参加は、日本の農業に壊滅的な打撃を与えるだけでなく、日本の経済や社会をアメリカ型の弱肉強食社会に変えることを意味するから、「日米地位協定の改定を提起する」と日米対等を主張してきた民主党が打ち出す政策ではない。現に、民主党の輿石幹事長は山田正彦元農水大臣と会談し、TPPを選挙の公約とすることはありえないという見解を示した。自民党でさえ二の足を踏むTPP参加を強引に推し進めようとすれば、再び大量の離党者が出て、民主党は選挙後に壊滅状態に陥るだろう。

 そんなことを民主党代表でもある野田総理がなぜ断行しようとしているのか。私は、民主党を壊滅させることこそが野田総理の最終目標なのではないかと考えている。
 民主党のなかで野田グループや前原グループは、もともと思想的に右派だった。国会議員の数では全体の6分の1を占めるにすぎなかった彼らが、民主党の実権を握ることになった。ただし、民主党の大勢は、彼らとは政治理念が根本的に異なっている。だから、民主党の6分の5を切り捨ててしまえというのが、野田総理の戦略だったのだろう。

 第一の戦略は原発の再稼働だ。野田総理は5月30日に大飯原発の再稼働について、「私の責任で判断する」と発言し、事実上再稼働の決断をした。この判断の是非は別にして、次の選挙のことを考えたら、民主党の支持者離れを加速したことは、間違いないだろう。再稼働の前に十分な安全確保が必要と考えている民主党支持者が、圧倒的多数を占めているからだ。
 第二の戦略は小沢切りだ。6月3日に小沢元代表と再会談した野田総理は、消費税の引き上げ法案を成立させるため、野党との法案修正協議に入ると、最後通牒を突きつけた。消費税引き上げの準備は半年もあればできる。引き上げは2014年4月からだから、時間的余裕が1年以上あったのに強行したのは、あえて民主党の分裂を引き起こすためだったのではないか。案の定、小沢グループは、消費税引き上げ法案をきっかけに離党することになった。

 これらに加えて今回のTPP参加方針の表明だ。朝日新聞が11月10日と11日に行った世論調査によると、野田内閣の支持率は18%と前回と同じだったが、不支持率は64%と、過去最高だった前回の59%をさらに上回った。11月10日の毎日新聞の報道によると、民主党の輿石幹事長は「今、解散したら50〜60人しか残らないだろう」と語ったという。民主党壊滅だ。
 そこまで民主党を追い詰めておいて、野田総理が次の一手として考えているのは、間違いなく第三極との連携。日本維新の会の橋下徹代表は、野田総理のTPP参加の公約化方針を「素晴らしいことだと思う」と評価した。仲はよさそうだ。

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