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南海トラフ巨大地震 消える市町村145万世帯(1)

 近い将来に南海トラフで発生するとされる巨大地震で、太平洋側を中心に人口が変動し、愛知、静岡、高知県などを中心に246市区町村145万6000世帯が“流出”するとの試算を、先頃、東大や名古屋大の研究チームがまとめた。
 「東日本大震災では原発事故が発生し、被災地の住民が何の支援もなく着の身着のまま避難しましたが、もし今、南海トラフ地震が起きた場合も、大量の難民が発生する。どこへ行けばいいのか分からず、日本は大混乱に陥ります」
 こう語るのは、防災ジャーナリストの渡辺実氏だ。

 地震などで甚大な被害が出た場合、応急措置として災害救助法が適用され国費が投入される。同法の所管は現在、厚労省から内閣府に移されているが、仮設住宅の所管は国交省と相変わらず縦割り行政がまかり通っているため、まず法整備が必要だと渡辺氏は訴える。
 「南海トラフ巨大地震は超広域で被災するため、直後から難民が発生すると見られますが、とても被災地内で片付く問題ではありません。仮設住宅の建設一つとっても、どこへ作ればいいのか喧々囂々となるでしょう。ところが、現行の法では対応できない。たとえば、被災民が被災地ではない地域に逃げたとしてたら災害救助法が適用されず、地元民の善意に頼るしかないのです」

 宮崎、高知、和歌山県などで被災した人は関西圏内で避難するものと見られ、兵庫県には11万1000世帯が流入、福岡県には15万5000世帯が流れ込むという。
 「おそらくそれに留まらず、日本海側の市町村にも多くの被災民が流入すると予測される。場合によっては、新幹線が開通した北海道へも避難する人が出てくるはずです。しかし、避難先の自治体も困惑するでしょう。したがって、今からどのような疎開パターンがあるかを十分に考えておくべきで、法整備も必要なのです」(同)

 一方で人口が流出する側はどうなるのか。高知、静岡県など、七つの県の沿岸部を併せて30の市町村で50%以上の世帯が流出し、なかには“消える町”も出てくるという。
 本州の最南端に位置する和歌山県串本町などは、県から「避難困難地域」に指定されている。わずか数分で津波が到達するため、踏み込んだ内容の被害想定を発表しているのだ。ところが、海に面した集落の住民115世帯のうち約半数は高齢者で、町が試算したところの町内に作れる仮設住宅はわずか100戸足らず。津波も最高で約10メートルの高さまで押し寄せるとされ、諦めの言葉を口にする住民も少なくないという。
 「町では津波からの避難を中心に防災対策を進めている。しかし、その後のことなどはまだ考えるまでに至っていないのが現状です。人口流出を考慮すれば、町は存亡の危機に陥る」(和歌山県関係者)

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