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大型企業買収ラッシュに潜む 孫正義ソフトバンク商法の危うさ

 新しく放送されるたびに話題になるソフトバンクのテレビCM。毎回“ナンバー1”というフレーズがやたらと耳障りだが、そんなことはお構いなしに孫正義社長の進軍ラッパは止まりそうもない。

 7月には大枚1兆5700億円を投じて米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収した。グループの有利子負債が6兆円に膨らんだことから、米格付け会社のムーディーズやスタンダード&プアーズは、同社の格付けを投資不適格の“ジャンク債”に引き下げたが、孫社長は全く意に介さない。
 10月19日には世界のスマートフォン市場の取り込みに向け、米携帯端末大手のブライトスターを買収すると発表した。同社はメーカーから仕入れたスマホなどの端末を世界約200の通信会社に卸売りする大手。ソフトバンクは約1230億円を投じて子会社化する。
 次いでモバイルゲームの世界大手であるスーパーセル(フィンランド)も11月中に買収する。投入額は約1515億円。これまた決してハンパな額ではない。
 他に英ボーダフォン日本法人買収、破綻したウィルコムを傘下に組み込み、さらにはイー・アクセスの買収−と、ソフトバンクのM&A攻勢には、あらためて目を見張らざるを得ない。

 とはいえ優良物件がセールに出るわけはない。孫社長が「これから世界に羽ばたきたい」と野心をあらわにした米スプリントにしても、現実には6年連続の赤字垂れ流しだ。しかも米国でのシェアは昨年実績で17%にすぎず、3位とはいっても1位のベライゾン(34%)、2位のAT&T(32%)から大きく離されている。だからこそソフトバンクが7月に買収を完了すると、前述した米格付け会社が揃って格付けを投機的水準、すなわち“ジャンク債”に格下げしたのだ。
 追い打ちをかけるように9月にはスプリントの取引銀行が「債務不履行の可能性がある」と指摘したように厳しい綱渡りが続く。これでスプリントの経営に万が一のことがあれば、借金の山に埋もれたソフトバンクの屋台骨を直撃する。
 「孫社長は積極果敢なM&Aでの成長戦略に活路を求めている。株価が右肩上がりで上昇すれば銀行は『超優良企業』とみなしてバンバン融資するし、標的企業を呑み込む際に有利な株式交換カードが切れるからです。しかし自転車操業と同じで、この手法は永遠には続かない。どこかで歯車が狂ったが最後、バブル崩壊の二の舞いに直結しますよ」(経済記者)

 不吉な兆しがある。グループ会社のソフトバンクモバイルが顧客約6万3千人分の信用情報を誤って登録した問題だ。分割払いで携帯電話やスマホを購入した顧客の信用情報を管理する際、入金があったにもかかわらず「未入金」と誤って登録し、全国を網羅する信用情報機関に送信していたのである。
 驚くべきことに、誤登録は4年前の2009年10月から始まっていたという。うち金融機関やカード会社から照会があったのは1万6827件で、ソフトバンク側は信用情報を修正した上で照会のあった顧客にメールなどで謝罪した。
 その終了を待って公表したのだが、これが10月1日のこと。それもホームページ上での「お知らせ」でお茶を濁した。関係者は冷ややかだ。
 「いくら会見好きな孫さんでも、あまりに恥ずかしくて開けなかったということです。顧客の問い合わせで会社側は3月には把握していた。それが実態を調べて公表するまでに半年もかかった上、滞納者ということでブラックリストに載り、クレジットカードの審査で引っ掛かった顧客が相当いる。その責任をトコトン問われることがわかっている以上、会社側は目立たない形で公表するしかなかったのでしょう」

 ところが、その前日(9月30日)、孫社長は今冬から来春にかけて発売するスマホの発表会見で、「重大な通信障害を起こしていないのはソフトバンクだけだ」と吹聴、返す刀でライバル社が起こした障害の事例を並べたものの、翌日に明かす信用情報の大失態については一言も触れなかった。
 ソフトバンクの顧客のうち、少なくとも12人がクレジットカードの契約時に断られているという。しかし、テレビなどは大スポンサーへの配慮からか、触らぬ神にたたりなしの姿勢を崩さない。
 「矢継ぎ早の大型買収だって、どこで墓穴を掘るかわかりません。第一、この信用情報の醜態では顧客の側に罪などない。それなのにメールで謝罪すれば事足りると思っているし、補償額にしても個々のケースで違うようです。これでは大枚を投じた買収先が疑心暗鬼になって当然です」(メガバンク関係者)

 巨大メディアの沈黙とは裏腹に、銀行団は“孫商法”の危うい前途を危惧し始めたようだ。

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