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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第5回 デフォルトは「しない」ではなく「できない」

 未だに日本国内に「日本が財政破綻、すなわち債務不履行(デフォルト)する」と信じている国民が少なくないことは憂うべきことだ。
 日本政府は国債の償還(返済)不能などのデフォルトに陥ることは「できない」。財政破綻「しない」のではない。財政破綻「できない」のであるから、誤解しないでほしい。

 日本政府が発行している国債は「外国人保有分」を含め100%日本円建てだ。日本の中央銀行である日本銀行は、市中の国債を買い取る代金として「新しい日本円」を発行する。日本円の発行は日本銀行の主業務の一つである。日本銀行は通常業務として日本国債を「買わねばならない」。そして、日本銀行は日本政府の子会社である。
 意外と知らない人が多いが、日本銀行は株式会社である(JASDAQに上場している)。とはいえ、もちろん日本銀行の株式の過半数は日本政府が保持している。すなわち、日本政府は日本銀行の親会社に該当する。

 連結決算のルールにより、親会社と子会社間のお金の貸し借りは相殺される。また、親会社から子会社への利払い(逆も同じ)も連結決算で相殺されてしまう。日本政府が「子会社」の日本銀行からお金を借りた場合、返済や利払いの負担が生じないのだ。
 国債の購入とは、「政府にお金を貸す」という意味だ。日本銀行が日本国債を購入するということは、「日銀が日本政府にお金を貸す」という話になる。この場合、まさに「子会社から親会社へのお金の貸付」に該当し、親会社側は返済や利払い負担が発生しない。無論、親会社である日本政府が日銀に利払いをしても構わないし、実際にしている。だが、日銀の決算後に「国庫納付金」として返還されている。

 子会社である日本銀行が、親会社の日本政府に「カネを返せ」などということはあり得ない。結果的に、日本政府は日銀に国債を購入させることで、借金の返済や利払いの負担が消滅してしまうのだ。
 「そんなのずるい!」
 と思うなかれ。何しろ、日本国は国民主権国家なのだ。日本政府は有権者である読者の投票で選ばれた政治家により構成されている。行政機構を織りなす官僚たちも、有権者に選ばれた政治家には逆らえない(少なくとも建前上は)。すなわち、上記の仕組みが気に入らないのであれば、読者自らが政治家になり、法律を改正すればいい。

 それはともかく、日本政府は国債を日銀に購入させることで、財政出動の原資を得ることができる。別に、直接的に日本銀行に国債を買わせる必要はない。日本政府は普通に国債を発行し、銀行から資金を借り入れる。日本銀行が、政府が発行した国債を銀行から購入する。これで構わない。
 以上のプロセスを経ることで、日本政府は返済の負担を増やさずに「デフレ対策」の原資を得ることができる。
 自民党の安倍晋三総裁が「日本銀行の建設国債買入と、政府の財政出動による国土強靭化(公共投資)」を主張しているが、あれは「デフレ対策」としては完璧に正しい。現在の日本がその政策を遂行すると、我が国は3年ほどで宿痾(長い間治らない病気)であるデフレーションから脱却できる可能性が高い。

 これに対し、経済を知らないマスコミが「そんなことをすると、国債価格が暴落する(国債金利が上がる)!」などと意味不明な批判を展開している。
 国債価格の暴落とは、市中(銀行など)の国債の供給が、需要をはるかに上回っている場合に発生する。すなわち金融市場で「国債の供給>需要」という関係が成立すると、国債価格が下落(国債金利が上昇)するわけだ。
 市中の国債を日本銀行が買い集めてしまうと、国債の需給関係は否応なしに「需要>供給」になってしまう。政府が「供給」した国債を、通貨発行権を持つ日本銀行が「回収」してしまうわけで、金融市場では「国債の不足」が発生し、金利はむしろ急落(国債価格高騰)することになる。

 「いや、そんなことをすると、銀行の国債に対する信用がなくなり、国債価格は結局は暴落する」
 と言いたくなった読者がいるかも知れないが、前回も書いた通り、日本の銀行に日々「貸し付けられる」のは日本円だ。銀行は預金として「借り入れた」日本円を誰かに貸し付け、金利を稼ぐのが仕事。デフレ下の日本では、日本円の借り手が不足しているからこそ、銀行は国債を購入せざるを得ない。
 たとえ日本政府の信用が凋落しても、日本銀行が金融市場の国債を「買い占める」と、銀行は手元の日本円を政府に貸し出さざるを得ない。すなわち、日本国債が買われることになり、国債金利は低下する。

 というわけで、日本政府が過去に発行した国債が100%日本円建てであり、かつ「子会社」の日本銀行が国債を買い入れることができるため、我が国は「政府の財政破綻」「政府の債務不履行」に陥りたくても陥れないのである。
 国民の安全や生命を守るインフラ防災などの公共投資の財源を、日本銀行の建設国債買入に求めている安倍自民党の政策は、現在の日本に適したソリューションだ。
 ただ、日本銀行の国債買入に代償が一つもないわけではない。それは、インフレ率の上昇だ。
 次回は日銀の国債買入の場合のインフレ率上昇について解説したい。

三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。

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