ドゥテルテ氏は選挙運動中から麻薬撲滅を公約に掲げ、「麻薬組織幹部や密売人の殺害に報奨金を支払う」と、暴言ともとれる発言を繰り返していた。これに危機感を抱いた麻薬組織が、「大統領暗殺」に懸賞金を掛けたのだ。
「国家警察によれば、選挙戦が終了した5月10日から6月15日までに、麻薬事件の容疑者29人が警察官により射殺された。これはドゥテルテ氏の“麻薬密売人殺害に最高で1160万円を支払う用意がある”との発言を、警察官が勝手に麻薬関連容疑者殺害の“黙認”と解釈したことが背景にある。ただし、人権団体では、麻薬犯罪に関与した警察官による共犯者抹殺の口止め殺人との見方も示しており、国家警察が麻薬犯に殺される前の自首を呼びかける異例の事態となっているのです」(現地記者)
しかし、当然ながら自首する者は少なく、逆に刑務所に収監中の麻薬組織の大物幹部が「大統領と国家警察長官の暗殺にそれぞれ約1億1600万円の報酬を提示」したとされ、双方が多額の懸賞金を巡って暗殺を“奨励する”という、とんでもない状態になっている。
「フィリピンは、粗製乱造の改造銃から真正の自動小銃まで、簡単に入手することが可能です。しかも、一攫千金を夢見るならず者や無職若者、麻薬常習犯などの犯罪予備軍、さらには反政府武装闘争を続けるイスラム過激派組織など、武器の使い方に習熟した者が非常に多い。このままでは新大統領就任後、双方の潰し合いが激しさを増すことは間違いありません」(同)
過激な発言から米大統領選の共和党候補者になぞらえ「フィリピンのトランプ」と称されたドゥテルテ氏。混乱は収まる気配はない。