「これに危機感を募らせたのが、運営会社の株式の6割を保有するJR西日本です。売り場を縮小し、隣接するJR西のファッションビル『ルクア』のテナントを誘致して集客力を高めようとしているのですが、4割を出資する三越伊勢丹は『余計なお世話だ』の態度を崩さない。餅は餅屋のプライドがそうさせるのでしょうが、JR西からは『三越伊勢丹とビジネスパートナーを組んだのが間違いだったのではないか』といった不信感さえ聞こえてきます」(業界関係者)
そうなるのも当然か−−。当初は「三越大阪店」を運営するなど土地勘のある三越主導で出店する計画だったが、途中から伊勢丹が前面に出た結果「独自のファッション性をアピールしたものの、地域ニーズと商品戦略に大きなズレが生じた」(前出・ライバル筋)。これぞJR大阪三越伊勢丹が業績低迷のアリ地獄に陥った最大の原因とされる。
三越伊勢丹HDを巡る怪しい雲行きの駄目押しは、三越と伊勢丹の合併以来、絶えず“救済された側”として人事や待遇面で冷遇されてきた三越側に「伊勢丹、恐れるに足らず」の気概が台頭していることだ。
同社は昨年11月、JR大阪三越伊勢丹の大不振を理由に今年3月期の業績見通しを大幅に下方修正した。しかし、実質的に蚊帳の外に置かれていた三越系の目には「伊勢丹、とりわけ大西社長の責任は大きい」と映る。まして昨年夏のセール不振は大西社長が持論にこだわり過ぎたことが最大の原因だ。これで名古屋、大阪の造反を招いた冬セールが“期待通り”の惨敗に終われば「三越勢は大西社長の引きずり降ろしに走るのではないか」と、同社ウオッチャーは指摘する。
「各社とも業績は厳しいが、そんな中で新宿の伊勢丹本店は増収の見通し。これを逆手にとって大西社長の応援団は『経営者としては立派』と言うでしょうが、新宿はもともと優良店舗だった。それよりも大阪を舞台にJR西との軋轢が長引けば、シビレを切らせた彼らが大西社長の追放を画策しないとも限らない。ただでさえ周囲に敵が多い彼のこと、どう転ぶか予断を許しませんよ」
内憂外患とは、よくぞ言ったもの。大阪や東京では阪急、高島屋、松坂屋などの包囲網が進んでいる。大西社長にとって、今年は本当の正念場になりそうだ。