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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 消費税再増税凍結?

 安倍総理が来年10月からの消費税再増税に踏み切るのかどうかを判断する期限が、あと1カ月あまりに近づいてきた。

 客観情勢は明らかに増税実施だ。一つの理由は、内閣改造で安倍総理が敷いた布陣。消費税再増税が財政健全化のために絶対に必要だとする麻生太郎財務大臣が留任した。谷垣禎一自民党幹事長は元財務大臣で、消費税の再増税は絶対に必要だと言い続けている。
 さらに、元財務官の黒田東彦日銀総裁も、日本経済・財政への世界の信任を維持するためにも、一度約束した増税は反故にできないとしている。日本の三大権力が、揃って消費税の再増税を主張しているのだから、消費税再増税のシナリオは揺るがない。

 また、昨年夏に政府が消費税引き上げについての意見を聞いた有識者に、日本経済新聞が再引き上げの是非を聞いたところ、6割の有識者が賛成の意向を示した。しかも、60人の有識者の中で反対した人は9人に過ぎなかった。賛成派の圧勝だ。
 賛成の人は、一体経済のどこをみているのだろうか。8月の家計調査で、実質消費は前年比マイナス4.7%、勤労者世帯の実質収入はマイナス5.4%だ。消費税引き上げ前の駆け込み需要の反動で消費が落ちたのではなく、所得減で消費が落ちているのだ。
 そのことは、景気動向にも明確に表れている。景気動向指数(一致指数)は、一昨年11月の101.6から今年3月の114.6まで急上昇したが、そこをピークに、今年8月は108.5へと急落している。日本経済は、消費税引き上げをきっかけに、まさに「逆V字失速」をしているのだ。内閣府自身も、景気動向指数の評価を「下方への局面変化を示している」としており、景気後退を示唆している。これだけひどい状況でも、多数の有識者が消費税を再引き上げすべきと言っているのだから、普通に考えたら安倍総理は再引き上げの判断をせざるを得ないだろう。

 ただ、私の頭からは、どうしても安倍総理が消費税引き上げ凍結を断行するシナリオが消えない。安倍総理が経済の専門家だからではない。政治家だからだ。
 圧倒的支持率を誇ってきた安倍総理も、ここのところの景気失速で人気にかげりが出てきた。さらに、今後は支持率を落とす要因が目白押しだ。自民党候補の苦戦が予想される沖縄県知事選、川内原発の再稼働、TPP交渉での大幅譲歩、拉致被害者の帰国難航など、難題続出なのだ。当然内閣支持率はずるずると落ちていくだろう。
 そうした中で、年末に安倍総理が突然「消費税引き上げを凍結します」と宣言する。支持率は急上昇するだろう。しかも、この作戦には大きな副産物がある。それは、盟友の麻生財務大臣斬りだ。
 麻生財務大臣は、一貫して消費税引き上げの必要性を説き続けてきた。そこに安倍総理が凍結宣言をすれば、麻生大臣ははしごを外されてしまう。場合によってはウソつき扱いされてしまうだろう。

 実は、安倍総理の座を狙う男が2人いた。石破茂氏と麻生太郎氏だ。石破氏は、地方創生担当大臣として座敷牢に入れた。あとは、麻生氏の息の根を止めれば、安倍総理の長期政権がみえてくる。政治家はそれくらいのことをするものだ。

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