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神戸製鋼・日産の不祥事は氷山の一角か 不信渦巻く日本製造業の瓦解

 神戸製鋼、日産の相次ぐ不祥事により、日本製造業の根幹が揺らぎ始めている。
 「このデタラメぶりは氷山の一角なのではないか。国のチェック機能をさらに徹底しなければ、日本の製品が世界で総スカン状態になりかねない」(大手鉄鋼メーカー投資家)

 まずは神戸製鋼の“ごまかし”から。
 「生産していたアルミ・銅製品、鉄粉までデータを偽装していた。例えば顧客が、この強度にして欲しいと10回の強度テストを依頼する。しかし実際は、6回しか行わない。それにテスト10回済みの検査証明書を添付し、納入していたわけです。中にはサイズをごまかしたものまであった。数値の偽装には数十人近い内部の人間がかかわっていたというから、会社ぐるみで行っていたも同然」(全国紙経済部記者)

 なぜ、こうした偽装が行われたのか。会見した神戸製鋼の梅原尚人副社長は「納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーから、つい手を染めてしまった」と言い訳に終始していたが、業界誌記者は、こう明かす。
 「苦情が来ない範囲で、ほどほどの品質管理をしておけば大丈夫という、契約内容より現場の判断を優先しても問題はないといった空気が強かった。言ってしまえば、数値よりもベテランの目を過信してしまう考え方から脱却できなかったということです」

 データ改ざんは、栃木県真岡市の真岡製造所など4カ所で約1年間にわたって行われていたというが、部品によっては20年近くデータを偽装した疑いも残っている。
 「データ偽装製品の納入先は国内外約200社。その中には、10月10日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた三菱重工のH2Aロケット、トヨタをはじめとする自動車メーカーの車のボンネット、JR東海、東日本、西日本なども車両の一部に使用している。三菱重工業などは、これから世界に売り出そうとしていた旅客ジェット機の『三菱リージョナルジェット』にも使っていた。ほかに、防衛省に納入された防衛装備品や米ボーイング社など、あまりに影響が大きすぎる」(航空業界関係者)

 今後、偽装製品を渡されていた企業はどうするのか。企業トラブルなどにかかわる弁護士は言う。
 「調査次第だが、車はリコール必至。神戸製鋼製品が使われた商品が売れなくなる可能性もある。ボーイング社などの海外大手企業は、訴訟を起こす可能性も否定できない。その場合、1社数兆円もの賠償が発生する懸念もあります」

 神戸製鋼だけではない。ここ数年、日本を代表する企業に不祥事が連続して起きている。2015年には東洋ゴムの免振ゴム装置のデータ改ざん問題が発生して経営陣が一掃された。その建物数は154棟に及び、同社の経営を揺るがしている。同年には東芝の1500億円を超える粉飾決算が発覚。その後、買収した米原発大手のウエスチングハウスの不採算が明るみに出て存続の危機にさらされている。
 「'16年4月には、三菱自動車で燃料試験のデータ改ざんが発覚した。軽自動車『ekワゴン』では燃費をリッター30.4㎞としていたが実際は26㎞程度で10%前後の水増し。これにより約62万台がリコール対象となり、結果的に日産自動車の傘下入りを余儀なくされた。そして最近では、その日産が無資格者による完成検査が発覚し、約116万台がリコール、追加費用が約250億円に達する騒ぎとなった」(自動車業界関係者)

 これまで日本製品を支えてきたのは“メイド・イン・ジャパン”の信用度。多少、価格は高くても、繊細な技術と完成度の高さが受け、中国などの安価な商品に勝ってきた最大の理由だ。
 「いまやその信頼が揺らぎ始めている。神戸製鋼では'03年から'06年にかけ、大気汚染防止法で定められた基準値を超えるばい煙を排出し、このデータを改ざんしていた。基準値を超えそうになると担当者が自動記録装置の記録ペンを操作し印字できないようにしていたのです。つまり今回同様、周囲を含めた関係者同士で不正に手を染めていたということ」(前出・記者)

 この事態に、経営アナリストがこう指摘する。
 「企業経営のためには、多少の悪事もOK、不正を繰り返してもバレなければ大丈夫だという安易な考えが常態化している。神戸製鋼のような創業1905年という歴史を持つ大企業などは、特にそう大事には至らないという妙な大船に乗った感覚がある。そのため、同様の企業が多い日本では、“今回の不正も氷山の一角”という見方が強い。このごまかしの悪習を阻止しなければ、日本のモノ作りが終わると同時に、ケタ外れの労働者が路頭に迷うことになりかねない。国が音頭を取って強固な監視システムを作るのも手です」

 今度こそ、歯止めをかけられるか。

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