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ハゲタカ外資が狙いうち! ソニー、西武HD、ヤクルト 標的3社それぞれのアキレス腱

 一難去って、また一難。恥も外聞もない資産大処分の末に5年ぶりで最終黒字を確保したソニーに、再び難題が浮上した。米国のヘッジファンド『サード・ポイント』のダニエル・ローブCEO(最高経営責任者)が平井一夫社長に面会し、映画・音楽事業を分割して株式の15〜20%を上場するよう提案したのだ。
 サード・ポイントは間接保有分を含めるとソニー株の約6.5%を保有、事実上の筆頭株主として6月20日開催の株主総会を前に経営陣に揺さぶりをかけた図式である。
 「このファンドは標的企業を攻め立てるアクティビストとして知られ、2年前に米ヤフーとガチンコした際には経営トップの学歴詐称を暴き、派手な委任状争奪戦を演じるなど“物言う株主”として恐れられている。日本で言えば往年の『村上ファンド』に輪をかけたような手強い存在です」(投資ファンド関係者)

 米国で悪名を馳せたアクティビストがソニーを狙い撃ちした理由は何か。
 「ソニーはテレビに代表されるエレクトロニクス部門が巨額の赤字を垂れ流している。だから映画・音楽部門の上場マネーをエレキに投入すればソニーは復活するとの論法ですが、ローブCEOの本当の狙いは上場に際して既存の株主に新株予約権を割り当てさせることでボロ儲けすること。提案を渋る平井社長にさらなる株の買い増しをチラつかせており、不気味さが増してきます」(ソニーOB)

 何せサード・ポイントは米国を中心に1兆3000億円余を運用し、米国のヘッジファンドの中でも資金力は群を抜く。「金だけじゃない。ソニーの切り崩し作戦も見ものです」と前出の投資ファンド関係者は打ち明ける。
 「ソニーが総会に提案する13人の取締役候補のうち10人は社外です。彼らはソニー経営の内情に疎い。それに目をつけたサード・ポイントがどう攻略するか。むしろ攻略しやすいと踏んだから標的にしたフシがあります」
 その魂胆通りに運べばソニーは遠からず映画・音楽子会社を上場させ、海の向こうから不敵な高笑いが聞こえてきそうだ。

 一方、ひと足早く風雲急を告げてきたのが西武鉄道を傘下に持つ西武ホールディングス(HD)だ。同社は米投資会社サーベラスが5月31日までTOB(株式公開買い付け)を実施、保有比率を35.48%に高めた(従来は32.44%)。
 目標とする44.67%には及ばず、2004年12月の上場廃止後も株を保有し続けた西武線沿線に多いとされる個人投資家(約1800人=発行済み株式の約13%)の大半から“肘鉄”を食った格好だが、総会で拒否権を行使できる3分の1以上の株式を握ったことは、経営陣にとっては不気味であろう。
 「再上場に向け二人三脚で来た両社に亀裂が生じた最大の理由は、売り出し価格を可能な限り高くして市場から利益を吸い上げたいサーベラスと、再上場の果実を優先させたい西武HDの思惑が激突したこと。今回、サーベラスが敵対的TOBに踏み切ったことで、両社の関係は修復不可能でしょう」(市場筋)

 両社の凄まじい攻防戦の産物として『西武ライオンズ球団の身売り』『西武線の一部廃線化』などの刺激的な情報が駆け巡り、世間の注目を集めたのはご承知の通り。それだけに、6月25日に開催される株主総会から目が離せないが、西武ウオッチャーは「本当の勝負はもう少し先になる」と警告する。
 「西武の6月総会に出席できるのは3月末までの株主で、まだサーベラスは正面突破が不可能です。しかしTOBを通じて西武の株主名簿を取得できたことは大きい。これを次々と切り崩せば株数が増大し、過半数確保も夢じゃない。その場合、再上場の売り出し価格を含めサーベラスの思うツボになる。世間の目には中途半端に映った今回のTOBは、次をにらんだシタタカな布石だったのです」
 サーベラスは西武の総会に向けて独自の役員候補を発表した。乗っ取り後への目配りを怠らない点は“さすが”というほかない。

 さて、野球ファンの耳目を集める点ではヤクルト本社も負けていない。同社は4月末、発行済み株式の20.61%を保有するフランス食品大手のダノンとの業務提携を解消した。その理由は「ヤクルト経営陣が資金力で勝るダノンに乗っ取られることを警戒した」(関係者)ためとされる。しかし相手は筆頭株主。繰り出す次の手に戦々恐々としているという。
 そもそもヤクルトが提携したのはダノンが'00年4月に突如として5%の株式を取得、その後もヤクルト株を買い増したことに危機感を募らせた同社が「一定期間は株を買い増さない」との条件のもとでダノンと業務提携した。その期限が昨年5月で切れたのに伴い、ダノンは「双方合意のもとで」35%まで買い増せることになったが、その交渉過程でヤクルトは提携解消カードを切ったのである。
 「これでダノンは遠慮なく敵対的TOBカードが切れるはず。しかし、実はTOBを敢行しなくても、経営権を奪取できる可能性が十分あるのです」(情報筋)

 もしダノンがヤクルト株の50%超を取得すれば、ヤクルト球団は外資規制に抵触して身売りを余儀なくされる。プロ野球フアンには由々しき事態である。
 情報筋が続ける。
 「ヤクルトの各地域の販売会社の中には、現経営陣の手法に批判的な面々が少なくない。ダノンはそのアンチ勢力と水面下で手を握れば、この期に及んで株買い増しに新たな資金投入をする必要などないというわけです」

 “会社は株主のモノ”という当たり前の経済学がまかり通るのか…、3社それぞれの攻防戦が見ものである。

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