ニホンウナギは日本や国際自然保護連合(IUCN)でも絶滅危惧種に指定されており、台湾は稚魚(シラスウナギ)の輸出を禁止している。そのため現在、日本での養殖には台湾からの密輸によって香港を経由して入ってくる稚魚が使われているとされるが、これにはいきさつがある。
「台湾はもともと日本から稚魚を輸入し、養殖したものを輸出していたのですが、日本の業者の要望でやめたいきさつがある。台湾人は基本的にうなぎを食べる習慣はないのですが、その報復措置として日本への輸出を禁じた経緯があるんです。しかし、今回の台湾の指定を受けワシントン条約の俎上にのるようなことがあれば、香港経由の稚魚の輸入も危うい状態になる」(魚市場関係者)
絶滅危惧種とはいえ法的拘束力はなく、即うなぎが食べられなくなるということはないが、各国の声が高まれば貿易規制がかかる可能性もある。そのため水産庁や事業団体などは、資源保護や管理を含め各方面に働きかけている状況なのだ。
そんな動きから、ここ10年はうなぎの高騰が続いていたわけだが、“将来は食べられなくなる”といった危機説もある。
しかし、ノンフィクションライターの窪田順生氏は、こんな見方を示す。
「一連のやりとりを見ていて、韓国の犬食文化を思い出しました。韓国では動物愛護団体などから赤犬を食べるのをやめるよう圧力がかかったが、それは韓国の食文化だからと突っぱねていた。女優のチェ・ジウも愛好者ですし、滋養強壮に優れていることから今も敬老の日に犬1匹が贈られるほどで、犬牧場もある。しかし、国際圧力というのはジワジワきいてくるもので、今の若い人にはダサいとか、無理して食べるほどのものではないとの声が多くなってきたようです。日本でも、我々の孫の世代には国際イメージを犠牲にしてまでうなぎを食べる人は、グッと少なくなっているかもしれません」
「レッドリスト」と呼ばれる絶滅の恐れがある野生生物のリストには、ニホンウナギの他にジャイアントパンダやトキが指定されている。
ちなみに、ウナギは世界に出回る7割が日本で消費されていると言われる。