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崖っぷち3兄弟[シャープ][富士通][NEC]の自業自得 戦犯隠しも後の祭り

 リストラに名を借りた電機メーカーの人減らしが止まらない。パナソニックは一昨年からだけで、約4万人を削減。ソニーなども追随し、日本を代表する有力企業から次々と優秀な技術者が海外の企業に流出している。このことから、経済産業省は「技術王国の崩壊に直結しかねない」と危機感を募らせている。

 そんな折も折、富士通は3月末に幹部社員300人の希望退職募集に加え、半導体部門の2000人削減、欧州子会社での1500人削減を発表。同時に4〜12月まで役員報酬を10〜50%カット、管理職の報酬も3〜7%削減することも併せて発表した。
 富士通は2月初め、今年3月期の業績見通しを下方修正し、950億円の最終赤字に転落(従来予想は250億円の黒字)と公表。赤字続きの半導体部門の再編を迫られたのが最大の理由で、これに伴い期末配当が見送られる。実はこのとき、転籍や派遣の打ち切りを含め、国内外で9500人を削減する方針を明らかにしたのだが、結局この計画には遠く及ばない形となった。

 それにしてもITシステムで官公需をガッチリ抑え、つい最近まで数少ない勝ち組企業とみられてきた同社が大赤字に陥り、屈辱の無配に塗れた背景には何があったのか。
 「世界を席巻してきた日本の半導体産業が、今やコスト競争力で韓国や台湾企業の後塵を拝し、悲惨な状態に追い込まれたということ。この立て直しは“日の丸半導体”のエースだった富士通でも極めて厳しく、下手すれば返り討ちに遭いかねません」(市場関係者)

 その理由として富士通ウオッチャーは、筋金入りの“お家騒動”体質を指摘する。かつて同社は、関澤義会長(当時)が東大閥を結成して私学勢を追放した。ところが早稲田出身の秋草直之社長(同)が実権を握ると、東大勢を次々と一掃。揚げ句に2009年9月には、早稲田出身の野副州旦社長(同)が秋草派から寝首をかかれる事件が発生した。その舞台裏の人間模様を巡っては今なお騒々しい。
 「経営陣が、会社の指揮よりも血で血を洗う派閥抗争にウツツを抜かしてきたのだから、社員の士気に影響して当たり前。それにもかかわらず、トップが『業績が悪いのは社員が働かないからだ』とシャーシャーと言ってのけ、猛反発を買った。そんなツケが今になって重くのしかかったのです」(同ウオッチャー)

 経営トップがドロドロの権力闘争に明け暮れ、今や死線をさまよっているという点ではシャープも負けていない。同社は台湾のホンハイ精密工業からの出資が白紙となり、韓国サムスン電子から“たった”103億円の出資を得たばかりだが、これで再建が軌道に乗るとは誰も思っていない。
 「狙いはシャープのプリンター事業です。この分野はシャープが世界シェア約12%で第5位なのに対し、サムスンは微々たるシェアしかない。そんな魂胆がなければ、液晶では歯牙にもかけないシャープに救いの手を差し出すわけがありません」(業界アナリスト)

 こうした一連の舞台裏を巡っても、シャープの救い難い“お家騒動”が背景にあったことで、関係者の嘲笑を買っている。ホンハイからの出資交渉を主導したのは、かねて片山幹雄会長との確執説が取り沙汰された町田勝彦相談役だった。一方、片山会長はサムスンとの資本提携を唱え、既に代表権を返上していることから、代表権を持つ高橋興三副社長を交渉に同行させるなど前のめりになった。ホンハイからの出資が見送られたことで片山会長の存在感が増したかと思ったら、これが大間違い。サムスン出資で「最終的にハンコを押す役目しか与えられなかった奥田隆司社長が『この期に及んで片山会長の復権はとんでもない』とばかり、片山会長を執行役に就かせなかった」(関係者)のだ。
 関係者が苦笑する。
 「会長、社長の確執を見かねた元社長の辻春雄相談役が、1月から特別顧問として頻繁に出社するようになった。その狙いは片山会長と町田相談役の影響力を排除し、若い人に舵取りを任せようとのことですが、これでサムスンの軍門に屈したら目も当てられません」

 NECも非常事態である。昨年は早期退職募集に2400人が群がるなど、トータル1万人の削減効果で、今年3月期は3期ぶりの黒字(200億円)を確保できる見通しだが、尻に火がついている点ではシャープといい勝負だ。
 同社は'11年に、パソコン事業を中国のレノボとの合弁会社に移管するなど中国企業との関係を深めているが、今度は携帯電話の自社生産を打ち切る方針を固め、これもレノボへの売却を目指しているとされる。さらに液晶ディスプレー関連技術の特許も台湾のホンハイに売却するなど、資産整理を加速させているのだ。
 口さがない向きは「一体、何屋になるつもりなのか。まさに“バザールでござーる”の行き着く先は身売りしかない」と斬って捨てる。

 ご多分に漏れず、同社もまた経営トップが壮絶な権力闘争を演じてきた。とりわけ2年前に自殺した西垣浩司元社長と関本忠弘元会長の確執劇は、今なお暗い影を落としている。
 「負けん気の強い御両人が演じた血みどろの暗闘は、ついに街宣車が繰り出す騒動にまで発展した。天下の上場企業がそんな醜態をさらせば、屋台骨を直撃するのは当然。今に至るNECの迷走は、10年ほど前に勃発したこの件に起因するといっても過言ではありません」(NEC関係者)

 この間、同社の将来に絶望した優秀な社員が“難破船ネズミ”を決め込み、これが業績悪化に追い打ちをかけた。富士通、シャープと共通する構図である。
 低迷の戦犯が経営陣の確執では救われようがない。

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