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阪神・藤川に「将来の監督に」の声? 他球団の“栄誉職”とは違う、球団が新設ポストに就けたワケ

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藤川球児

 「最後のマウンド」の前日は“いつも通り”、ベテランは全体練習の中で淡々とそのメニューをこなしていた。

 11月10日、巨人戦(甲子園球場)。阪神・藤川球児が22年の現役生活を締めくくる。引退後は、球団が彼のために新設した「スペシャルアシスタント(SA)」職に就くが(2021年1月)、その後、いろいろと試されることになりそうだ。

 「掛布雅之氏が二軍監督を退いた後、『オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザー』の肩書を与え(2年間)、和田豊氏も監督退任後、『オーナー付シニアアドバイザー』、『球団本部付テクニカルアドバイザー』を務めています。チーム功労者に対する球団の敬意」(在阪記者)

 新設ポストへの就任が藤川に打診されたのは、11月4日だったという。

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 他球団にも“栄誉職”を贈られたベテランはいる。しかし、詳しく聞いてみると、“営業部所属”なのだ。ペナントレースには直接の関係はなく、取引先企業、地元自治体などのイベントに行き、球団のピーアールをするのが主な仕事となる。

 阪神が藤川に与えた職責は重い。新外国人選手の調査を含めた編成にも携わる。また、新設される女子硬式野球クラブチームの指導にも関わるという。

 「各球団が小学生対象の野球教室やアカデミーを設けています。OBがコーチをやっていますが、実は、子どもに教えるのが一番難しいんです。プロ野球選手に教えるのなら、一定レベル以上の技術を持っているので、フィーリングで伝わります。子どもが相手だと、的確で分かりやすい言葉で説明しなければなりません。だから、アカデミーを経験させてからコーチに就任させるケースが増えてきたんです」(プロ野球解説者)

 女子選手に対しても、同様だ。自由に解説やTV番組出演もできるが、球団は指導者の準備、そして、編成に携わることでチームの戦力を見極める能力も習得させようとしているのだ。

 「昨年オフ、鳥谷が退団した時点で、『藤川を将来の監督に』の声が出ていました」(前出・在阪記者)

 元阪神捕手がこんなことを話していた。藤川とバッテリーを組んだ時のことだ。その日は決め球のフォークボールがショートバウンドしてしまい、苦しい展開になったという。攻守交代でベンチに帰り、「いつもと調子が違うが?」と質問したら、藤川は、

 「いや、オマエのためにやったんやで」

 と、返してきたそうだ。

 その元阪神捕手は出場の機会に恵まれなかった。藤川は故意にフォークボールをショートバウンドさせ、その元捕手の捕球技術の高さをベンチにいる首脳陣に伝えようとした。ボールを後ろにそらさず、しっかりと捕球できる技術があると分かれば、その元捕手の出場機会も増えると思い、あえて不振を装ったのだ。

 一歩間違えれば、失点につながり、自身も次の登板機会を失いかねない。努力しているチームメイトを思う彼の優しさだ。

 編成としてチームを客観的に見る時、何よりも指導者になれば、勝利優先で優しさは邪魔になる。しかし、再びユニフォームを着た時、後輩たちは「藤川さんのためにも勝ちたい」と思うはずだ。阪神は暗いニュースが続いていた。ラスト登板だけはハッピー・エンドで締めくくってもらいたい。(スポーツライター・飯山満)

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